会社を作ろうと思ったら、色々なことを考える必要があります。
自分だけで考えるのは大変なので、誰かに相談するのもいいと思います。
そこで誰に相談するのがいいかと言うと、わたしは税理士に相談するのが良いと思っています。
今回は、会社を作ろうと思ったら、税理士に相談するのが良いと思う理由を書いてみます。
いつものことですが、このブログは小規模事業者に向けて書いていますので、いきなり何百人もの従業員を抱えてスタートするような方や、5年後あるいは10年後には上場を目指すというような方は対象としていません。
会社を作ろうと思う人は大きく分けて2つのケースがあります。
1つは、もともと個人事業をしていた人が、その事業を会社として行おうというケースです。
いわゆる法人成りです。
もう1つは、会社員などが、独立して事業を始める時に、会社を作って事業を行うというケースです。
どちらのケースでも、最初は、その事業を会社で行うのがいいのか、個人事業として行うのがいいのかという検討をすることからスタートすることが多いです。
それでは、会社ができるまでの流れに沿って書いていきます。
1.その事業を会社で行うのがいいのか、個人事業として行うのがいいのかを検討する
もともと個人事業を行っている人でも、新たに事業を始める人でも、まずは、その事業を会社で行った方がいいのかどうかということを検討します。
会社と個人とでは税金の扱いが大きく異なります。
税金だけではなく、社会保険についても変わってきます。
税金や社会保険を中心にお金の面で、どちらが良いのかは大きなポイントになります。
10年以上前であれば、社会保険に加入しないことを前提に有利不利の判定をすることもあったかもしれませんが、今では、社会保険に加入しないという選択肢はないと思っています。
もし、相談をした際に、社会保険に加入しなくても大丈夫ですよと言われるようなことがあったら、相談相手を変えた方がいいでしょう。
信用面も大きなポイントです。
会社の方が取引先の信用を得やすく取引がしやすくなるという場合があります。
また、会社でないと取引できないということもあります。
また、従業員を採用する場合、個人事業主と会社が同じ条件で募集をしていたら、会社の方が採用面で有利になることもあると思います。
従業員の社会保険のことを考慮しても会社の方が採用面では有利と言えます。
その事業を何年継続するかということもポイントとなってきますし、その事業を自分の代で終わりにするのか、次の世代に引き継いでいくのかもポイントとなります。
その他にも、会社と個人のどちらが良いのかは、個別の事情によって変わってきます。
これらのことを総合して考える必要があります。
2.会社名、会社の目的、本店所在地、資本金、出資割合、役員構成、事業年度などを決める
会社と個人のどちらが良いかの検討が終わり、会社を作ろうとなっても、まだまだ考えることはたくさんあります。
会社名
通常は会社を作るとなったら、ある程度の期間はその会社で事業を行うつもりですから、会社名は大切です。
適当につけてしまって、後から失敗したということにならないようにしなくてはいけません。
小規模企業の場合、何をやっている会社かがわかるような名前をつけるという考え方があります。
不動産業なら、○○不動産株式会社とか、○○エステート株式会社とか、会社名を見ただけで、不動産業とわかるような会社名にします。
それから地名をつけるのも有効です。
例えば、四街道不動産株式会社とすれば、会社名を見ただけで、四街道にある不動産会社なんだということがわかります。
もっと広範囲で営業するのであれば、千葉不動産株式会社とか、北総不動産株式会社にしたり、逆にもっと狭い範囲で地元になじむのであれば、鹿渡不動産株式会社というような会社名にすることも考えられます(鹿渡というのはわたしの事務所がある地名です)。
美容院やアパレルなどの会社であれば、イメージを大切にした会社名にすることも考えられます。
また、覚えやすい会社名や書きやすい会社名にするのも良いと思います。
会社名が長いと書くのも大変ですし、覚えてもらうのも大変です。
会社名もやはり、それぞれの会社の個別の事情を十分に検討して決めた方がいいでしょう。
会社の目的
会社の目的は謄本に記載されますので、適当に決めるという訳にはいきません。
ひと昔、いやふた昔くらい前であれば、とりあえず、色々な目的を書いておくといいという考えがありました。
しかし、現在では、それだと金融機関などから口座の開設を断られてしまう可能性があったり、何をやる会社なのかわからないということで、信用面で問題になる可能性があります。
ですから、実際にやることに加えて、やる予定のものを書くのが良いと思っています。
後は、許認可のことも考えなくてはいけません。
目的に書いていないと許認可が取れないということもありますので、注意が必要です。
本店所在地
本店所在地もしっかりと考えて決めた方がいいです。
どこで商売をするのがいいのか。
場所によって、その事業が成功するか失敗をするかが変わってくることもあります。
わたしを例に取ると、四街道市内に住んでいたので、四街道市内で開業することを検討しましたが、四街道というのは人口94,000人程度の小さな市です。
隣には政令指定都市の千葉市があります。
人口で言えば、千葉市は四街道市の10倍です。
商売をするなら、千葉市の方が優れている面も多くあります。
色々と検討した結果、わたしは四街道市内で開業し、今のところは間違っていなかったと思っています。
念のため言っておくと、わたしの場合は個人事業です。
ただし、会社にしろ、個人事業にしろ、場所は大切だということです。
また、市町村をまたいで複数の事務所を持つと、均等割という税金が増えることも知っておいた方がいいです。
資本金
資本金もポイントとなります。
税金のことを考えると、1,000万円が大きな分かれ目になります。
資本金が1,000万円以上になると、1期目から消費税を支払うことになってしまいます。
また、資本金が1,000万円超だと、地方税の均等割という税金が高くなります。
ですから、税金を安くしたいのであれば、とりあえず、資本金は1,000万円未満で設立することをおすすめします。
資本金において、もう一つのポイントは、資本金が少ないことによる信用面の低下です。
資本金1,000万円以上の会社としか取引できないという会社もあるようですし、資本金が多い方が一般的に信用が高くなる傾向があります。
それから、金融機関からの借入を考えている場合は、資本金の額によって借りられるお金の額が変わってくることもありますので、この点にも注意が必要です。
こちらは、はっきりとはわかりませんが、資本金が少ないことで銀行の口座開設を断られる可能性があるかもしれません。
ただし、資本金よりも事業の実態で決まると思いますので、口座開設に関しては、資本金をそこまで意識しなくてもいいかもしれません。
もう一つ、資本金が少ないことによる弊害は、設立時の会社のお金が少ないということです。
会社を設立して、最初の売上げが入金されるまでは、会社のお金は減り続けます。
基本的には、そのお金は資本金から出ていきます。
資本金が少なければ、会社のお金はすぐにマイナスになってしまいます。
ただし、社長個人が会社にお金を貸すことで解決できますので、個人でお金を持っているのであれば、この点はそこまで考えなくてもいいかもしれません。
ちなみに、資本金は会社のお金になりますので、資本金としたお金は個人に戻すことはできません。
資本金が多い方が信用力が高いからと、無理して個人のお金を出資して、後から個人に戻せばいいやということはできませんので、この点も知っておきたいところです。
しかし、社長個人が会社に貸したお金は、会社にお金があれば、いつでも社長個人に返済することができます。
もちろん、社長個人に返済しても税金はかかりません。
そのお金を会社のものにして良ければ資本金、一時的に会社のお金になるのはいいけれど、個人に戻したいというのであれば、会社への貸付金として処理するのも一つの考え方です。
出資割合、役員構成
小規模事業の場合、ここはシンプルにした方がいいと思っています。
シンプルにというのは、社長が全額出資をして、役員も社長1人ということです。
社長の配偶者や親なども一緒に事業をしていくのであれば、親族を役員にするのは、大きな問題とはならないでしょう。
他人に出資してもらうことは、あとあと問題になる可能性があります。
事業をスタートするときは、お互いに同じ気持ちを持っているかもしれませんが、人の気持ちというのは変わっていきます。
時間がたって、お互いの意見が対立することがあるかもしれません。
そう言った時のことを考えると、出資割合や役員構成も、会社を作る際の大切なポイントになると言っていいでしょう。
もちろん、共同出資や、他人役員を入れることで上手くいくケースもあると思いますので、あくまでも個別の判断ということになります。
事業年度
事業年度にもポイントがあります。
まずは消費税です。
1期目の事業年度がなるべく長くなるようにすると、消費税の免税期間が長くなります。
例えば、4月に設立するのであれば、4月1日から3月31日の事業年度にすると、消費税の免税期間が長くなります。
ただし、1期目の最初の6ヶ月の売上と人件費の額がともに1,000万円を超えると2期目から消費税の課税事業者になってしまいます。
そのような場合は、1期目の事業年度を6ヶ月にすることで、2期目まで消費税の免税事業者になれる可能性があります。
他には、その事業の繁忙期などを考慮する方法もあります。
毎年春先に売上が多く上がるのであれば、春先が事業年度の最初になるようにします。
そうすることで、その事業年度の利益予測がしやすくなり、節税対策が取りやすくなることもあります。
会社として事業を行いたいかどうかの気持ちが大切
今までは、主にお金の面について書いてきました。
しかし、個人的には、最後は、会社として事業を行いたいという気持ちがあるかどうかが大切だと思っています。
単にお金の面で有利だから会社にするというのは、あまりおすすめしません。
事業は10年20年続いていくことが考えられます。
最初は会社が良いと思って会社を作ったが、5年10年と経つうちに、会社にした意味がなかったなと思うことも珍しくありません。
会社を作ったあとに、会社を作って後悔する人は結構います。
そういった相談を受けることもあります。
ですから、自分が会社として事業を行いたいかどうかというのは大きなポイントだと思っています。
自分が会社でやりたいと思えるのであれば、会社を作ればいいですし、どっちでもいいけど、ただ単に会社の方が有利と言われたから会社を作ったというのはやめた方がいいかもしれません。
最初は有利不利で検討したとしても、会社を作る段階では、会社としてやるんだという気持ちを大切にして欲しいと思います。
事務処理面について
ここまで考えて会社にしようと思った人であれば、それほど大きなことではないかもしれませんが、会社と個人事業では、事務処理面の違いもそれなりにあります。
もちろん、会社の方が事務処理面の負担が大きくなります。
わたし個人の意見としては、個人の所得税確定申告は自分でできても、会社の税務申告はなかなか自分でやることは難しいと思っています。
ということは、会社を作るということは、税理士に仕事を依頼する可能性が高いということになります。
もちろん、中には自分で申告をしている人もいると思います。
費用面も検討しなくてはいけないですけど、会社としてやらなくてはいけない事務処理(経理処理を含む)もきちんとやらなくてはいけないということも忘れてはいけません。
登記手続き
ここまで検討して、会社を作るということが決まれば、次は会社設立の登記手続きということになります。
登記手続きを専門家に依頼する場合は、司法書士へ依頼することになります。
わたしは、会社設立の相談を受けることは多くあります。
その場合は、ここに書いたような段階を経て会社の設立を検討します。
そして、会社設立が決まった段階で、お客様へ司法書士を紹介しています。
もちろん、登記も自分で行うという方もいます。
まとめ
会社を作ろうと思ったら、検討することはたくさんあります。
これらの検討事項を考えずに、いきなり会社を作ってしまうと、後になって「失敗した!」と思うことも少なくありません。
そして、これらのことを相談するには最初に税理士に相談するのが良いと思っています。
検討事項には、お金に関することが多く、その中でも税金に関することが多いからです。
税理士の中には、会社の設立相談が得意ではないという人もいると思いますので、税理士の中から、会社の設立に関する相談ができそうな人を見つけて相談するのが良いと思います。
わたしは、独立した後もそうですし、勤務時代から、会社の設立から関与することが多くあります。
ですから、多くの会社の設立に関する相談を受けてきました。
その経験からも、最初の相談は税理士にするのがいいと思っています。
登記手続きのところで、登記手続きの専門家は司法書士と書きました。
20年ほど前であれば、税理士が登記の手続きをしていたことも珍しくはなかったように思います。
現在は、少なくともわたしは、登記手続きをしている税理士を知りません。
ただし、中には、未だに登記手続きをしている税理士もいるようなことをツイッターなどで見かけます。
こうした行為は問題ですので、やめて頂きたいと思います。
もし、会社設立の相談をした税理士が、「登記手続きは私(税理士)がやります」と言った場合は、「ムムム!」と思ってください。
その税理士には依頼しない方がいいかもしれません。
社会保険の手続きに関しても同様のことが言えます。
会社を作るということは、その人にとってとても大きなことです。
十分に検討した方がいいと思います。
ですから、会社を作ろうと思ったら、いきなり設立登記の依頼をするのではなく、まずは会社を作るということがどういうことなのか、会社で行った方がいのかなどを十分に検討した方がいいです。
そしてその最初の相談先は、税理士がいいのではないかと思っています。
【編集後記】
少し前に、界隈のツイッターで話題になっていたことについて書いてみました。
わたしの中では、会社設立の相談とはこういうことだと思っています。
ちょっと長い記事になって読みづらいかもしれませんが、思ったことを書いたら、このような長さになってしまいました。