昨日は、土地や建物を売却したときの税金について書きましたが、本日は相続で取得した土地や建物を売却したときの税金について書いてみます。
相続で取得した土地や建物の取得費
相続した土地や建物を売却したときでも、譲渡所得の金額の計算式は、昨日記事に書いたものと変わりません。
収入金額ー(取得費+譲渡費用)=譲渡所得の金額
相続で取得した土地や建物を売却したときは、取得費が変わってきます。
購入した資産であれば、取得費は購入代金になりますが、相続で取得した場合は、買ったわけではないので購入代金はありません。
相続で取得した土地や建物の場合は、死亡した人が購入したときの購入代金などをもとに取得費を計算します。
子が父から相続により取得した土地を売却した場合は、父が取得したときの購入代金が取得費になります。
父が比較的最近取得したものであればともかく、何十年も前に取得したものだと、購入代金もわからないということも多いでしょう。
その場合は、売却価格の5%を取得費とすることも出来ます。
この点も、昨日書いた通りなのですが、売却価格の5%を取得費とすると、多額の譲渡所得が発生してしまいます。
購入のときの資料がないと簡単にあきらめずに、とにかく探しましょう。
父が1,000万円で購入した土地であれば、取得費は1,000万円になります。
相続で土地を取得したときは、相続登記をします。この登記費用は、取得費に含めることが出来ます。
ちなみに、相続による土地の取得では、不動産取得税はかからないことになっています。
相続で土地や建物を取得した場合の取得時期
土地や建物の売却は、所有期間によって税率が変わります。
相続による取得の場合は、取得時期も死亡した人の取得時期をそのまま引き継ぎます。
子が、父が昭和30年に取得した土地を、平成25年に相続により取得した場合の取得時期は、昭和30年になり、長期譲渡所得となります。
所有期間は、売却した年の1月1日時点で、5年を超えるかどうかで判定します。
5年超であれば長期譲渡所得金額、5年に満たなければ短期譲渡所得金額となります。
相続があってから3年以内に売却したときの特例
相続によって取得した土地や建物を、相続税の申告期限から3年以内に売却した場合には、相続税の一部を取得費に加算することが出来ます。
取得費に加算する相続税額は結構複雑な計算式になってしまうので、省略します。
簡単に言うと、相続のときに支払った相続税額のうち、今回売却した資産にかかる部分の金額が、取得費に加算する金額になります。
相続税額が1,000万円、相続した財産の総額が8,000万円で、今回売却した土地の価額が4,000万円であれば、取得費に加算する相続税額は、500万円ということになります。
平成26年12月31日以前に相続により取得した土地や建物を売却したときは、計算式が少し変わります。
縄伸びには注意
縄伸びというのは、実際の土地の面積が、登記上の面積よりも多いことを言います。
実際は縄伸びがあるにも関わらず、相続税の申告の際に、登記上の面積で評価額を計算して申告している場合は注意してください。
相続後に売却する際は、通常測量をします。
相続税のときは300㎡で申告していた土地が、2年後に売却したときは330㎡で譲渡所得の申告をすると、相続税の修正申告をしなければいけなくなります。
縄伸びのある土地を売却する際は、その点も考慮して売却するようにしましょう。
まとめ
相続によって取得した土地や建物を売却した場合の、取得費と取得時期は、死亡した人の取得費と取得時期を引き継ぐというのが、一番のポイントです。
相続から3年以内の売却の場合は、相続税額を一部取得費に加算することができる場合があります。
相続後に土地や建物の売却を考えている場合は、相続税の申告期限から3年以内という期間を意識しましょう。
しかし、縄伸びがある場合は、注意が必要です。
税率は、相続で取得した土地や建物でも、変わりません。
土地や建物の売却は、金額が大きくなります。
不安な点があったら、お近くの税理士に相談することをおすすめします。
【編集後記】
先日、税理士試験の合格発表がありました。
官報に知っている名前は何人かありましたが、何人かしかありませんでした。
全員が合格する試験ではありませんから、知っている人全員の名前があることなんてないと思ってはいますが、知っている人全員の名前があれば嬉しいのが事実です。
簡単に、「来年は合格するように頑張ってください」とは言えない気持ちです。
それでも、言います。「頑張ってください。」と。