減価償却費はお金が出ていかない経費と言われることがあります。
わたしは、この表現が好きではありません。
お金が出て行かない経費と言うと勘違いをする人がいるのではないかと思うからです。
お金が出ていかないのではなくお金が出ていく時期と経費になる時期がずれるだけ
減価償却費は決してお金が出ていかない経費ではなく、お金が出ていく時期と経費になる時期がずれる経費です。
お金が出ていかないで経費になるなんて夢のような話に聞こえてしまいます。
例えば、車を例に取ります。
3月決算の会社で、2018年4月1日に、600万円の車両を現金支払いで購入したとします。
耐用年数は6年、減価償却方法は定額法とします。
この場合の減価償却費は以下のようになります。
2019年3月期 100万円
2020年3月期 100万円
2021年3月期 100万円
2022年3月期 100万円
2023年3月期 100万円
2024年3月期 100万円(1円の備忘価格はここでは考慮しないこととします)
2019年3月期は、600万円のお金が出ていき、経費になるのは100万円です。
この期だけをみると、600万円も支払っているのに100万円しか経費にならないということです。
減価償却費はお金が出ていかない経費とはとても考えられません。
2020年3月期以降は、お金が出ていかないで、毎期100万円の減価償却費という経費が計上されます。
確かに、この間については、減価償却費はお金が出て行かない経費と言えそうです。
しかし、お金は2019年3月期にすでに支払っているのであって、支払った時期と経費になった時期がずれているだけということがわかります。
先に支払ったお金が後になって経費になるのですから通常の経費より不利な扱いとも言えます。
次に、この車両を6年間に渡って分割払いで購入した場合を考えます。
減価償却費については、先ほどのケースと同じです。
お金はというと、毎年100万円ずつ出ていきます。
つまり、出ていくお金の金額と、経費になる金額は同じということになります。
この場合でも、減価償却費のことをお金が出ていかない経費と言うのはおかしいということになります。
結果として経費になるのはお金を支払った金額
お金が出ていく時期と経費になる時期はずれますが、最終的に出て行ったお金と経費になったお金は同じ金額になります。
先ほどの例で言うと、出ていくお金は600万円で、経費になる金額も600万円です。
出て行ったお金と経費になったお金の額が同じなのは、途中で資産を売却しても除却しても変わりません。
固定資産除却損など、勘定科目は変わりますが。
減価償却費が経費になるのは、その分のお金を支払った(あるいは今後支払う)ということです。
減価償却費分のお金が出ていかないのでお得というわけではありません。
減価償却費分のお金は先に支払っているか、今後支払うのです。
特に、最近では不動産投資などで減価償却費が魔法の経費のように語られることがありますので注意しましょう。
まとめ
減価償却費をお金が出ていかない経費と言うと、勘違いをしてしまう人がいると思うので好きではありません。
減価償却費はお金が出ていかない経費ではなくて、お金が出ていく時期と経費になる時期がずれる経費です。
ある程度会計のことをわかっている人に対して言うのであればいいのですが、そうでない人にとっては、逆にわかりづらい表現になっていると思います。
【編集後記】
今日はいよいよプロ野球のドラフト会議です。
予想では、千葉ロッテは大阪桐蔭の藤原君を単独指名できそうです。
藤原君を獲れたら、嬉しいですね。