小規模な法人の社長にしても、個人事業主にしても、順調に事業が進んでいくと人を雇うことを考えるでしょう。
あるいは、最初から1人や2人の従業員を雇うこともあります。
法人と個人事業主では、人を雇う場合に取り扱いが違う部分がありますので、みていきましょう。
厚生年金、健康保険などの社会保険
人を雇ったら、厚生年金、健康保険(以下、「社会保険」)に加入しなくてはいけないということは何となく知っているかもしれません。
独立する前に、会社勤めをしていた人であれば、会社員時代に社会保険に加入していたと思います。
この社会保険については、法人と個人事業で取り扱いが大きく変わります。
法人については、すべての法人が社会保険に加入しなくてはいけません。
ですから、社長一人の会社でも社会保険に加入します。
法人が従業員を雇ったとして、その従業員が社会保険の加入資格を満たす人であれば、当然社会保険に加入します。
アルバイトなどで、社会保険の加入資格を満たさない場合もあるので、従業員の全員が加入するわけではありません。
個人事業の場合は、業種によって例外はありますが、原則的には、5人以上の従業員がいる場合は、社会保険に加入する必要があります。
従業員が5人未満であれば、社会保険に加入しなくてもいいということになります。
さらに、法人と個人事業主で大きく違う点は、個人事業主の場合、自分自身は社会保険には加入できないという点です。
個人事業主が5人以上の従業員を雇って、事業所が社会保険に加入したとしても、個人事業主自身は、国民年金と国民健康保険になります。
社会保険については、保険料の負担が大きいので、加入したくないという人もいます。
そういう人にとっては、個人事業主のほうがいいかもしれません。
しかし、従業員の側からいえば、社会保険に入っている方が安心して働けるという側面もあります。
どちらがいいとは、一概には言えないでしょう。
労災保険、雇用保険などの労働保険
労災保険、雇用保険(以下「労働保険」)については、法人であろうと個人事業主であろうと、従業員を一人でも雇うと加入しなくてはいけません。
法人と個人事業主で変わりはありません。
法人、個人事業主ともに、自分一人の場合は、加入できないのも同じです。
労働保険については、社会保険に比べると保険料が安いので、一人でも雇う場合は、必ず入るようにしましょう。
源泉徴収義務の違い
法人と個人では、源泉徴収義務にも違いがあります。
源泉徴収制度とは、給与や報酬など源泉徴収の対象となる支払いをする際に、支払者が、源泉所得税を徴収して、源泉徴収した所得税を税務署に納める制度です。
この源泉徴収をする義務があるものを源泉徴収義務者と言います。
法人の場合は、社長一人の会社でも、源泉徴収義務者になります。
個人事業主の場合は、自分一人の場合は、源泉徴収義務者ではありません。
人を雇って給与を支払うと源泉徴収義務者になります。
源泉徴収義務者になると、個人の税理士事務所に報酬を支払った場合でも、源泉徴収をする必要があります。
一人だけの個人事業主の場合は、源泉徴収義務者ではないので、個人の税理士事務所に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。
配偶者が青色事業専従者で、専従者給与を支払う場合でも、源泉徴収義務者になります。
まとめ
法人と個人事業主で、人を雇う場合の違いをみてきました。
どの項目をとっても、同じか、法人の方が手間がかかることがわかります。
法人の場合は、社会保険加入が必須ですし、源泉徴収義務も必須です。
個人事業主の場合は、従業員が5人以下であれば、社会保険の加入は任意ですし、人を雇わなければ、源泉徴収義務もありません。
一番大きな違いは社会保険料の負担でしょう。
月20万円の給与を支払う従業員を2人雇った場合、会社負担の社会保険料は、月額56,000円程度になります。
年額では、672,000円です。
法人か個人事業主かで、こんなにも負担が違うのです。
給与が月20万円の従業員を2人ほど雇った会社の利益と、社長の役員報酬を足した額が800万円程度だとしたら、利益の8.4%もの社会保険料を負担しなければいけません。
既に法人を設立している場合は、社会保険料のことまで考えて人を雇う必要があります。
数人の従業員を雇わなければいけないような事業を始める場合で、法人にするか個人事業で行うかを検討している場合は、社会保険料のことまでよく考えて法人にするか個人事業主にするかを決めるようにしましょう。
【編集後記】
昨日の「有吉のダレトク?」という番組で、四街道市にある「ラーメンダイニング 絆」というお店が紹介されていました。
謎ラーメンとして、ものすごく大きなチャーシューが乗ったラーメンが出てきました。
テレビでは、あまり美味しそうには見えなかったけど、テレビに出ることでいい宣伝になるのかなぁ。