続・上場株式の配当所得や譲渡所得の税金が複雑すぎる

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2月10日に、下記の記事を書いていました。

上場株式の配当所得や譲渡所得の税金が複雑すぎる

2017.02.10

株式の配当所得や譲渡所得の税金が複雑すぎるというものでした。

税理士の中でも、この取り扱いをすらすらと言えないという人は少なくないのではないでしょうか。(きっと、わたしだけではないはず)

先日、税理士の山端一弥さんのブログで気になる記事を読みました。

「上場株式の譲渡損失の繰越控除や損益通算をしたら住民税の申告も検討しよう」~誰がために端楽?税理士のブログ~

税務通信に記事が載っていたということで、最近読めていなかった税務通信を読んでみました。

上場株式等の配当所得や譲渡所得について、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができ、しかも、住民税については、納税通知書送達日(概ね6月上旬頃)までに、市町村に申告書を提出すればよい、とのことです。

さらに、所得税と住民税のいずれの申告書の提出が先かは問わないと書いてあります。

個人的には、かなりびっくりしました。

以前にこんな記事を書きました。

個人住民税の申告は、誰がいつしているの?

2017.01.31

上記の記事でも書いていますが、所得税の確定申告書を提出すると、住民税の申告書も提出したものとみなします。

ということは、例えば、先に所得税で、上場株式の譲渡所得を含めた確定申告書を提出した時点で、住民税でも、上場株式の譲渡所得を含んだ申告書を提出したことになります。

しかし、今回税務通信では、そのあとの住民税の納税通知書送達日までに住民税の申告書を提出すればいいと言っているのです。

通常税金の課税方式を選択できるものについてはいったん提出したものについて、期限後にその選択を変えることはできないことがほとんどです。

住民税の申告書の提出期間も3月15日までなので、そのあとに、選択を変えることができることになります。

なんでこんなことになったのでしょうか。

市町村としては、納税通知書の発送間際に、所得税とは違う選択をした申告書を提出されたら、手続きが大変だと思います。

それなのに、こういうことになったのは、勝手な推測ですが、市町村に苦情があったからではないでしょうか。

「税金が安くなると思って、所得税で、上場株式の配当控除や、繰越控除、損益通算の確定申告をしたのに、国民健康保険料が高くなるのはおかしいだろう」と言うような苦情があることは予想できます。

でも、国民健康保険料が上がったことに気づくのは、市町村によって違うと思いますが、通常もう少し後になってからです。

なぜ、納税通知書の送達日までとしたのかは疑問です。

市町村としては、ギリギリまで対応しますよ、ということでしょうか。

これで、上場株式の配当所得や譲渡所得の取り扱いがますます複雑になりました。

具体的にどういうことが考えられるかというと、例えば次のようなケースが考えられます。

平成27年に上場株式の譲渡で100万円の損失が発生して、損失の繰越として確定申告をしました。

平成28年は、上場株式の譲渡益が150万円出たので、前年の損失100万円を繰越控除するための所得税の確定申告をします。

しかし、所得税の確定申告をすると、国民健康保険料が上がってしまうので、住民税においては、繰越控除をせずに、平成28年の譲渡益については申告不要を選択します。

ここで考えることは、住民税について、申告不要とした場合の譲渡益150万円に対して源泉徴収された住民税(150万円×5%=75,000円)と、住民税を申告した場合に上がる国民健康保険料を比較することです。

住民税で申告不要とした場合は、譲渡益に対して住民税5%が源泉徴収されたままになります。

国民健康保険料が上がる分がまるまる有利になるわけではありません。

計算は、かなり面倒だと言っていいでしょう。

実際は、誰かの扶養になっていたりする場合もあり、判断材料はこれだけではありません。

所得税では、扶養から外れて、住民税では扶養になるというケースも出てきます。

所得が変わるということは、色々と変わることがあるのです。

平成29年度税制改正で上場株式等の配当所得や譲渡所得で、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できることが明確化

今回のお話は、平成29年度の税制改正のお話なのですが、28年度分の申告においても可能ということです。

しかし、結構なレアケースだと思いますし、市町村の対応も足並みが揃っていないことが予想されます。

市町村に電話で問い合わせても、すぐに回答してくれることはなく、確認して折り返すのに時間がかかりそうなケースです。

市町村によっては、対応が定まっていないところもあると思われます。

所得税と住民税で異なる課税方式を選択する場合は、お住まいの市町村に事前に確認することをおすすめします。

まとめ

投資が趣味でも仕事でもない一般の人は、上場株式の配当所得や譲渡所得について、基本的には、一つの証券会社等で源泉徴収ありの特定口座で取引をすることをおすすめします。

特定口座が一つであれば、配当所得と譲渡損失の損益通算も自動的に行われますので、確定申告をするケースが少なくて済みます。

その場合でも、譲渡損失を繰越したり、繰越した損失を控除するときは、確定申告をしなければいけません。

株式の売買を頻繁に行う人は、株式の税制も勉強しているでしょうし、そのような手間も気にしないという人も多いでしょう。

しかし、そうでもない人は源泉徴収ありの特定口座を一つにしたほうが無難です。

源泉徴収なしの特定口座で、狙って、その年の上場株式の譲渡益を20万円以下にして申告不要にしたい人もいると思いますので、絶対に源泉徴収ありがいいということではありません。

また、申告不要は特定口座ごとに使いわけることができます。

本格的に取引をする人であれば、複数の口座を使い分けた方がいいという人もいるでしょう。

どちらにしても、上場株式の配当所得や譲渡所得の税制が、もう少し簡単になればいいなぁ、と思います。

【編集後記】

WBCで昨日の筒香選手のホームランは凄かったですね。

昨年あたりから、筒香選手を松井秀喜さんと比較する声をよく聞くようになりましたが、今回のWBCを見ていると、松井さんと比較したくなるのも納得ですね。

数年後には、松井さんのように、メジャーでホームランを30本打っているかもしれないですね。


 

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ 千葉県生まれ、千葉県育ち。 四街道市在住。 小規模企業の節税に強い、渡邉ともお税理士事務所 代表税理士。 節税をしながら、長期の資産形成をサポート。