住宅ローン控除は、居住用部分についてのみ受けることができます。
しかし、居住用部分がおおむね90%以上の場合は、全部について住宅ローン控除を受けることができます。
自宅兼事務所で仕事をしている個人事業主が住宅ローン控除を受ける場合は、どうしたらいいでしょうか。
住宅ローンを全額受けられないのはもったいないのか
住宅ローン控除を受けている人なら、住宅の全部について住宅ローン控除が受けられないとしたら、もったいないと思うのではないでしょうか。
自宅兼事務所で、事業用部分が30%の個人事業主を例に話をしていきます。
建物の取得価額は2,200万円、耐用年数は22年とします。
住宅ローン控除の額は満額で年30万円とします。
居住用部分が90%以上であれば、住宅ローン控除を満額受けられるため、実際は3割を事業用として使っているのに、事業用部分を1割として、住宅ローン控除を全額受けることとします。
この場合、事業所得で必要経費に計上する減価償却費の額は10万円です。
所得税、住民税、国民健康保険料を合わせた税率を40%とすると、10万円の減価償却費が計上されることにより安くなる税額は4万円です。
住宅ローン控除30万円と、減価償却費を計上することにより安くなる税額4万円を合わせて34万円負担が少なくなります。
適正に処理をした場合
実際の居住用部分は70%ですから、本来受けることができる毎年の住宅ローン控除の額は21万円です。
対して、事業所得の計算上減価償却費として計上する必要経費の額は30万円になります。
この場合、安くなる税金(国民健康保険料を含む)は30万円×40%=12万円です。
住宅ローン控除と合わせると、33万円負担が少なくなります。
これだけだと、適正に処理をした方が少し負担が多いように思います。
しかし、自宅の光熱費や固定資産税、火災保険料、地震保険料の割合も30%にすることで、適正に処理した方が負担が少ないケースが多くなるのではないでしょうか。
また、所得税の税率によっても変わってきます。
税率の高い人ほど、減価償却費やその他の経費が多い方が負担が減ります。
まとめ
住宅ローン控除は、90%以上が居住用であれば、全額控除を受けることができます。
ですから、自宅兼事務所で事業を行なっている個人事業主が、このことを知っていると、実際の事業割合よりも低いことにして住宅ローン控除を満額受けないともったいないと思いがちです。
住宅ローン控除は、10年間の総額で数百万円にもなりますから、もったいないと思ってしまうのも仕方ありません。
しかし、先ほど計算したように、事業用部分はきちんと事業所得の計算に入れた方が負担が少なくなるケースもあります。
住宅ローン控除は、国民健康保険料には影響を与えませんが、事業所得の金額が下がれば、国民健康保険料が下がります。
その点も考慮して計算した方がいいです。
中途半端な知識で、よく比較検討もせずに住宅ローン控除を満額受けた方がお得と思ってしまうことはやめましょう。
仮に、居住部分を90%とした方が負担が少なった場合には、事実と異なる申告になってしまいます。
しかも、そっちの方が負担が少ないとしても、わずかな額でしょう。
そうであるならば、素直に正しい申告をした方がいいことになります。
※この記事は、2018年10月12日に修正しました。
【編集後記】
現在父が入院しているので、病院によく行きます。
病院で働いている人をみると、大変な仕事だなぁと思います。
わたしには務まらない仕事ですので、尊敬しますし、感謝します。