車両を買うと節税になると思っている人は意外に多いです。では、車両を買うとトータルでいくら経費になるのでしょうか。
中古車両購入時のよくある勘違い
一番多い勘違いは、決算間際に4年落ちの中古車を買うと全額経費になるというものです。
普通自動車の耐用年数は6年ですが、4年落ちの普通自動車の場合は、耐用年数が2年になります。
定率法の場合で、耐用年数が2年のときの償却率は1.000ですから、1年で1円を残して経費になります。
この場合、1年でというのがポイントです。1年で全額経費ですから、半年なら半分しか経費になりませんし、決算月に買ったのでは、1/12しか経費になりません。
期首の時点で当期は利益が出ることが分かっているときはいいのです。決算間際に利益が出るとわかってから買っても、当期の経費になる金額はたかが知れています。もちろん、来期以降の経費になるので、トータルで経費になる金額は、期首に買っても期末に買っても変わりません。
4年落ちの中古車を買うと節税になるという言葉が強烈に印象に残っている人が多いので、気を付けましょう。
買替えの場合は下取り価格を考慮して
車好きの社長に多いのですが、1~3年くらいの短期間で車両を買い替える人もいらっしゃいます。車好きの人は高級車を買うことも多いです。
こういうケースでも、車両を買うと節税になると思っていると、税額の予測を間違うことがあります。
取得価額400万円の新車を1期目の期首に買って、3期目の決算月に同じく400万円の新車に買い替えたとします。下取り価格は300万円(わざと高めに設定しました)です。消費税は考慮しません。
1期目 減価償却費 4,000,000×0.333=1,332,000 期末簿価 4,000,000-1,332,000=2,668,000
2期目 減価償却費 2,668,000×0.333=888,444 期末簿価 2,668,000-888,444=1,779,556
3期目 減価償却費 1,779,556×0.333=592,592 売却時簿価 1,779,556-592,592=1,186,964
購入車両減価償却費 4,000,000×0.333×1/12=111,000
2台分の減価償却費計 592,592+111,000=703,592
下取り車売却益 3,000,000-1,186,964=1,813,036
高級車は下取り価格も高めになることが多いです。
3期目の決算間際に節税になると思って車を買い替えました。
しかし、3期目の減価償却費は2台分合わせても、703,592にしかなりません。これに対して、下取り車の売却益は、1,813,036です。
節税になるどころか、1,813,036-703,592=1,109,444の利益が計上され、税金が増えてしまうのです。
車好きの人や利益が良く出ている会社では、車両を短期間で買い替えるとこういうことは珍しいことではありません。節税とか関係なく車両を買い替えるというならいいのですが、節税のために買い替えると思っているならば、要注意です。
車両を買ったら、基本的には耐用年数にわたって取得価額が経費になります。400万円の車両ならば、トータルで経費になる金額も400万円です。しかし、下取にだす場合は下取価格を経費からマイナスする必要があるのです。
定率法の場合は、償却のペースが早いので、売却益が計上されることはよくあります。特に決算間際に下取価格が高めの車両を買い替える場合は、利益が出ることを忘れないようにしましょう。
車両は節税のためではなく、必要に応じて買いましょう
最後は、普通のまとめになってしまうのですが、節税のために車両を買うことはおすすめしません。たまたま、会社の業績と買い替えのタイミングがあったときは、税金が減ってラッキーと思うくらいがいいのではないでしょうか。
車両にかかわらず、物を買うとお金が出ていきます。30万円の税金を減らすのに100万円のお金が出ていくのです。しかも、これが決算間際なら出て行ったお金のうち、経費になるのはほんのわずかです。
それならば、利益を出して、利益の30%程度の税金を払って、70%を会社に残した方がいい場合も多いと思います。
【編集後記】
今日の記事を書いていて、「かいかえる」の漢字って「買い替える」でいいんだっけなあと思いました。「買い換える」かなあと思って調べたのですが、どちらでもいいみたいですね。
償却のペースがはやいの、「はやい」も最初は「速い」と書いて、あれっと思って調べたら、「早い」かなと書き直しました。
ブログを書くようになって、漢字とか、言葉に気を使うようになりました。書いていて引っ掛かりを感じることが結構あります。その都度調べるのですが、新たな発見もあります。日本語って微妙なニュアンスとかも含めて難しいけど、面白いですよね。