土地や建物を売却したときは、給与所得や事業所得とは別に譲渡所得の金額を計算します。
給与所得や事業所得、不動産所得などは、他の所得と合算して税金が計算される総合課税制度が採用されています。
これに対し、土地建物の譲渡所得の金額は、他の所得とは、分離して税金を計算する分離課税制度が採用されています。
土地建物の場合の譲渡所得の金額の計算方法
譲渡所得の金額は、下記のように計算します。
収入金額ー(取得費+譲渡費用)=譲渡所得の金額
1.収入金額
収入金額とは、売却価格のことです。
土地や建物の場合、固定資産税の未経過相当額を買主からもらうことがよくあります。
固定資産税の未経過相当額をもらった場合は収入金額に含めます。
固定資産税は、賦課期日(その年の1月1日)現在の所有者を納税義務者として1年分が課されます。
年の途中で所有者が変わっても、前の所有者が1年分の固定資産税を支払います。
例えば、その年の固定資産税が20万円の場合において、6月30日に売買したときは、半年分の10万円を買い主からもらうことがよくあるのです。
この10万円を買主からもらうことが、固定資産税の未経過相当額を精算するということあり、譲渡所得の金額では、これを収入金額に含めます。
2.取得費
取得費は、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料、その後の改良費などが含まれます。
建物の取得費については、上記の金額から、減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費となります。
土地の場合は、減価しないと考えられるので、減価償却費相当額を考慮しなくていいのですが、建物の場合は、減価償却費相当額を控除するので、計算が複雑になります。
簡単に言うと、1,000万円で取得した建物を20年後に売却した場合に、減価償却費相当額が500万円だとすると、建物の取得費は500万円ということになります。
減価償却費相当額の計算は、事業用資産と非事業用資産で異なりますし、複雑になりますので、ここでは省略します。
3.譲渡費用
譲渡費用は、土地や建物を売るためにかかった費用のことで、以下のようなものがあります。
・売るためにかかった、仲介手数料、測量費
・貸家を売るために借家人を立ち退かせる場合の立退料
・土地を売るために、建物を取り壊した場合の取り壊し費用、建物の損失額
・売主が負担した印紙税
・資産の売却価格を増加させるために譲渡の際に支出した費用
譲渡費用は売るための費用なので、売却までにかかった修繕費や維持管理費用は、譲渡費用には含まれません。
4.取得費が不明の場合
土地や建物を随分前に取得していて、取得費がわからないときは、収入金額の5%を取得費とすることが出来ます。
例えば、収入金額が5,000万円のときの取得費は、250万円とすることが出来ます。
実際の取得費が、収入金額の5%未満の場合でも、取得費を収入金額の5%とすることが出来ます。
取得費が不明の場合は、多額の譲渡所得が発生することになります。
先祖代々持っている土地とかであるならば仕方がありませんが、30年から40年くらい前に取得したのであれば、家中探し回ってでも、取得の際の資料を見つけた方がいいです。
見つかれば、税額がだいぶ変わるかもしれません。
どうしても見つからない場合でも、簡単にはあきらめずに、税理士に相談するなどしてみましょう。
特別控除額
土地や建物を売却したときは、一定の要件を満たす場合には、特別控除額を控除することが出来ます。
・収用等により、土地や建物を売却した場合 ・・・5,000万円
・マイホームを売却した場合・・・3,000万円
他にも、ありますが、それぞれ要件がありますので、特別控除額を控除する場合は、要件を確認するようにしてください。
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合
平成21年及び平成22年に取得した土地等を平成28年以降(平成21年に取得した場合は平成27年以降)に譲渡した場合は、その土地等の譲渡所得の金額から、1,000万円を控除することが出来ます。
取得の日が大事です。
気づかなければ、特別控除を忘れてしまうこともありますので、平成21年及び平成22年に取得した土地を売却する場合は、この1,000万円の特別控除の要件を確認するようにしましょう。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
土地や建物を売却したときは、所有期間によって、短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれます。
売却した年の1月1日の時点で、所有期間が5年を超えていれば、長期譲渡所得、5年を超えていなければ、短期譲渡所得となります。
平成28年中の売却であれば、平成22年12月31日以前に取得した土地や建物であれば、長期譲渡所得になります。
売却した年の1月1日時点というのがポイントです。
例えば、平成23年3月に取得した土地を平成28年5月に売却した場合の所有期間は、5年3か月になります。
しかし、売却した年(平成28年)の1月1日時点での所有期間は、4年10ヶ月となりますので、短期譲渡所得となります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得では、税率が異なりますので、複数の土地や建物を譲渡した場合は、短期譲渡所得と長期譲渡所得をそれぞれ別々に計算します。
土地や建物の短期譲渡所得と長期譲渡所得金額は、別々に計算しますが、例えば、短期譲渡所得がマイナスで長期譲渡所得がプラスの場合は、相殺することが出来ます。
土地や建物の譲渡のマイナスは、土地や建物のプラスからしか控除出来ません。給与所得や事業所得からはマイナス出来ません。
また、例えば、短期譲渡所得のマイナスを長期譲渡所得から控除しても、控除しきれない部分の金額はないものとされます。翌年以降に繰り越すことは出来ません。
マイホームの場合で、一定の要件を満たす場合は、マイナスを他の所得から控除出来たり、翌年以降に繰り越すことも出来る場合があります。
税額の計算方法
土地や建物を売却した場合は、他の所得とは分離して税金を計算します。
上記の計算方法によって求めた、譲渡所得所得の金額から、特別控除額を控除した金額が課税譲渡所得金額といいます。
「課税」がついただけです。
1.長期譲渡所得
課税長期譲渡所得金額×15%
復興特別所得税を含めた税率は、15.315%
住民税の5%も合わせると、20.315%
2.短期譲渡所得金額
課税短期譲渡所得金額×30%
復興特別所得税を含めた税率は30.63%
住民税の9%も合わせると、39.63%
復興特別所得税や住民税を合わせると、長期で約20%、短期で約40%程度と覚えておくといいでしょう。
3.マイホームを売ったときの軽減税率
マイホームを売った場合において、売った年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えているときは、一定の要件を満たすことによって、税率が軽減されます、
課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下の部分の金額については、10%、6,000万円を超える部分の金額については、15%になります。
住民税の税率は、6,000万円以下の部分の金額については、4%、6,000万円を超える部分の金額については、5%となります。
所得税、復興特別所得税、住民税を合わせた税率は、6,000万円以下の部分については、14.21%、6,000万円を超える部分の金額については、20.315%となります。
まとめ
土地や建物の売却は、他の所得とは別に計算すること。短期と長期に分けて計算することなどがポイントです。
更に、取得費がわからない場合も、簡単にはあきらめずに、昔の資料を探すことも大事です。
土地や建物の売却に関しては、金額、税金ともに大きくなる場合があります。
また、特例の数も多く、適用要件も細かく決められています。
ご自身で、確定申告することが不安だという人は、税理士に相談することをおすすめします。
【編集後記】
家庭菜園で採れたレタスを食べました。
食感は、イマイチで60点というところでしょうか。2年目の家庭菜園はかなり苦戦しています。
1年目に比べて、時間をかけていないということもあるでしょう。やはり、手間をかけないと美味しい野菜も出来ないですね。