設立1期目や2期目で、まだ売上も少なく赤字になる場合、「役員報酬は0でもいいや」という人もいます。
赤字の場合の役員報酬は0にするのがいいのでしょうか。
役員報酬の決め方
前提として、親族のみの会社、正社員の他人従業員がいないか、いたとしても数人程度の会社、または他人従業員がアルバイトやパートのみの会社として話を進めます。
社長が全額を出資している、いわゆる所有と経営が一致している場合は、役員報酬を自分が好きな額に設定することも可能です。
赤字でも高い役員報酬にしたり、凄く儲かっているのに低い役員報酬にしたりしてもいいのです。
では、役員報酬はどのように決めるのがいいのでしょうか。
基本的には、役員報酬を除いた会社の利益をもとに計算するのがいいでしょう。
例えば、役員報酬を0とした場合の利益が1,000万円だとしたら、役員報酬を700万円にして、会社に利益を300万円残そうというように考えます。
実際には、役員報酬を変更すると社会保険料も変わりますので、その点も考慮する必要があります。
所得税と法人税の税率差、社会保険料を考えて有利な金額にする方法です。
これが一番合理的な方法ではないでしょうか。
その際は、社長の所得控除の額を把握する必要があります。
配偶者控除や扶養控除、小規模企業共済等掛金控除などを合わせた所得控除の合計額は数百万円以上にもなることがあり、所得税の税率の区分が変わるくらいの影響があります。
役員報酬が700万円、所得控除の額が200万円の場合の所得税と住民税を合わせた税率は20%で済みます。
法人税の税率を30%とすると、意外と役員報酬をもらった方が有利だと思えるのではないでしょうか。
役員報酬が1,000万円、所得控除の額が200万円の場合でも、所得税と住民税を合わせた税率は30%です。
社会保険料については、上限がありますので、上限の金額もしっかりと確認したうえで役員報酬を決めるようにしましょう。
赤字の場合
では、役員報酬を除いたとしても赤字になる場合はどうでしょうか。
普通に考えれば役員報酬を払える状況ではありません。
しかし、赤字の金額は翌年以降9年間にわたって繰り越すことができます。
所得税のかからない範囲内で役員報酬を設定すれば、その分会社の赤字が大きくなり、翌年以降に繰り越すことができる金額が増えます。
例えば、役員報酬を除いた赤字が100万円の場合に、役員報酬を年96万円(月8万円)とすると、翌年以降に繰り越す赤字の金額は196万円になり、翌期以降の節税効果があります。
赤字だから役員報酬を0にするよりは、社長個人の税金がかからない範囲内で役員報酬を設定したほうが税金上は有利になるのです。
社長の所得控除が大きければ、その分を考慮してもう少し高く役員報酬を設定してもいいでしょう。
その場合、社会保険料が上がることには注意が必要です。
銀行からの借入金がある場合は、赤字を大きくしたくはありませんが、年96万円程度の役員報酬であれば、そのことが問題になることもないでしょう。
役員報酬を0にして赤字100万円でも、役員報酬を96万円にして赤字196万円でも、銀行の評価が大きく変わることはないと思います。
役員報酬が0では、社会保険にも加入できません。
さらに、配偶者にも給与又は役員報酬を支払っている場合は、注意が必要です。
健康保険(協会けんぽ)では、同居の場合、収入が扶養者の半分未満でないといけません。
社長の役員報酬が、配偶者の給与の2倍を超えないといけないのです。
社長の所得控除の額を把握して役員報酬を決め、配偶者の給与をその半分未満に設定するのが現実的でしょう。
まとめ
設立1期目や2期目で、赤字だから役員報酬は0でいいやと思わずに、所得税や住民税のかからない範囲内で役員報酬を計上したほうが税金上は有利になります。
もちろん将来黒字になることが前提ですが、翌年以降の法人税の節税に繋がります。
このことは、役員報酬に限ったことはありません。
他の経費でも赤字だから計上しなくていいやとは思わないようにしましょう。
将来の税金を捨てていることになります。
今回お話したことは、必ずこうしたほうがいいというようなことではありません。
一つの例としてお話しています。
有利不利と、自分の価値観や考え方なども含めて総合的に判断するのがいいでしょう。
【編集後記】
26日の日曜日は、千葉県知事選挙です。
立候補者が4人いるはずなのに、道路などにある選挙の掲示板には3人のポスターしか貼ってないです。何でなのでしょうか。
1票1票の集まりが当選を左右しますので、選挙は投票しましょう。