「タニタの働き方革命」を読んで疑問に思ったこと

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今回のブログ記事は、「書評・おすすめ本」のカテゴリーになっていますが、単純に本を読んで疑問に思ったことを書きますので、おすすめ本ということではありません。

最近タニタの働き方革命についてのネット記事などを読んで疑問に思うことが多かったので、この本を読んでみました。

ツイッターでも、下記の様なツイートをしていました。

どちらかというと、否定的な立場で本を読んでの疑問になります。

ですから、単なる疑問というよりは、否定的な疑問になることをあらかじめご了承ください。

よくわからずに批判をするのもどうかなと思い、本を読んでみた訳ですが、結論を先に言うと、本を読んだ後も疑問はほとんど解決しませんでした。

以下、色々と疑問に思ったことを書いていきます。

労働時間について

なぜか、最初に、残業を美化するようなことが書かれています。

著者にはそういった意図は全くないと思いますが、読む方としてはそう感じてしまいました。

「残業削減だけやっていたのでは、日本は沈没する」とか、「9時5時の発想では、AI時代を生き抜けない」と書かれています。

主体性が大事だと言いたいみたいですが、わたしには伝わりませんでした。

「会社員」と「フリーランス」のいいとこ取り

個人のメリットとしては、会社が人件費として支払う総額が同じであっても、手取り収入を大幅に増やすことができます。社会保障の面でも、弊社の社員時代と同等の保障内容を確保できる分だけのお金は「報酬」としてお渡しします。

と書かれているのですが、本当にそうなのか疑問です。

実は、この本の別の個所に、経費の少ない人は手取りが減ることがあるので、シミュレーションを行っていると書かれています。

ですから、みんながみんな手取りが増える訳ではないということです。

そして、経費の金額は年によって違いますから、シミュレーションを行っても、将来においてもそうなるかどうかはわからないでしょう。

また、社員時代と同等の保障内容を確保できる分だけのお金を支払うと書いていますが、そもそも社員時代と同等の保障を得ることが可能なのか疑問です。

まず、厚生年金ですが、厚生年金は生きている限りもらえる年金です。

これと同等の保障をどうやったら得られるのでしょうか。

遺族年金や障害年金のことまで考えたら、なおさら同等の保障がわからなくなります。

次に、健康保険から国民健康保険に変わることについて、就業不能保険が出てきます。

就業不能保険は、大体働けなくなってから60日たたないとお金をもらえないものがほとんどだと思います。

これに対して、健康保険の傷病手当は、4日以上仕事に付けなかったときにもらうことができます。

とても代わりにはならないのではないでしょうか。

失業保険もどうやってカバーするのでしょうか。

女性であれば、産休中の出産手当金や、育児休業給付金なども、民間の保険でカバーできるものがあるのでしょうか。

実際にこの制度を利用している人のインタビューの中でも、次のように書かれていました。

特に就業不能保険はめちゃめちゃ悩んで、決めるまでに1年くらいかかりました。

やはり、会社員時代と同等の保障を得ることが簡単でないことがわかります。

もし、この1年の間にこの方が病気で働けなくなっていたとしたら、どうなったのでしょうか。

美容室業界を見習っている

この働き方改革のきっかけは、美容室業界にあったようなことが書かれています。

美容室やリラクゼーションサロンなどで、個人と業務委託契約を締結しているところがあることは知っています。

ただし、それは、「会社員とフリーランスのいいとこ取り」ではなく、会社が支払う社会保険料や消費税を少なくしたいという理由があるのではないかと思っています。

世の中には、いいとこ取りに成功している美容室があるのかもしれないので、絶対的なことは言えないのですが、個人的には、会社の都合でそういった契約形態をとっているのではないかと思っています。

手取り収入が増えるかどうかの疑問

手取り収入は増えると書かれていますが、細かい手取り収入の計算の仕方は書かれていません。

給与所得の場合の手取り収入とは、給与の額面金額から、所得税、住民税、社会保険料を控除した金額となります。

今回のタニタの場合、退職金や個人型確定拠出年金、福利厚生、会社負担の社会保険料、通勤交通費を報酬に含めています。

そうであるならば、フリーランスとなってからの手取りは、所得税、住民税、国民年金保険料、国民健康保険料、通勤交通費、タニタ共栄会への支払い(報酬の1%)、個人事業税、会社員時代と同等の保障を得るための生命保険料、小規模企業共済の掛金、個人型確定拠出年金や国民年金基金の掛金などを控除した金額となるはずです。

これだけの控除をきちんと考慮したうえで、手取りが増えているのかどうかがわかりません。

このことに関して、この制度を実践している人のインタビューで、気になる記述がありました。

手取りは増えましたか?という質問に対する答えです。

1年目、収入はかなり増えたことは増えました。ただ、増えた分、住民税と国民健康保険料の負担がかなり大きくなったのは驚きでした。

手取りは増えましたか?と聞かれているのに、収入は増えましたという答えはちょっと的外れです。

さらに、その後に、住民税と国民健康保険料の負担がかなり大きくなったのは驚きと言っています。

???

事前に入念にシミュレーションをしてたんじゃなかったの?という疑問があります。

また、手取りの意味はわかっているのかな、という疑問もあります。

手取りは、住民税や国民健康保険料の控除後の金額ですから、もし、手取りが増えているのだとしたら、これらの金額が増えることは、驚くほどのことではないのではないかと思います。

負担ではなく、負担感が増えるのは事実なので、言葉が上手くないだけなのかもしれませんが。

しかし、本当に手取りが増えているのか、疑問ではあります。

特に、退職金部分については、前払いでもらっているので、そのこともきちんと理解しているのでしょうか。

3年間で26人しか制度を利用していない

もし、これが本当に良い制度だとしたら、もっと多くの人が利用するのではないでしょうか。

タニタは、グループ全体で1,200人の社員がいるそうです。

率にしたら、2.1%の人しか利用していないことになります。

ちょっと微妙な数字のような気がします。

信用問題

本の中にも書かれていますが、信用問題も大きいです。

フリーランスになると、住宅ローンや車のローンが難しくなります。

このことについては、現状解決していないと書かれています。

取締役が参加

社長も含めて取締役の人も制度に参加しているそうです。

これについても、本当に問題はないのかなぁ、と思ってしまいます。

休みがないのが課題

働き方革命なのに、インタビューで「休みがないのが課題」と回答している人がいました。

副業解禁ではいけなかったのか

タニタは副業は禁止されているそうです。

そもそも、副業解禁ではいけなかったのでしょうか。

経費を使って税金が減るのはいいことなのか

つい先週も3Dのテクニックを学びに3日間で11万円というセミナーを受けたんですが、そういう自己研鑽のための代金も経費になると聞いているので、ちゃんと領収書をもらいました。

この支払で3万円から4万円の負担が減少するかもしれませんが、11万円は出ていっていることを忘れてはいけません。

まとめ

色々と書いてみましたが、もっと色々と疑問に思ったことがあります。

もともと否定的な見地から入っていますので、否定的な疑問が多くなっている可能性があります。

この問題は簡単なことではありませんので、こういった新しい挑戦に多くの疑問が生じるのは当然のことなのかもしれません。

今後、この制度が良い方に改善されて、制度の利用者が満足のいくものになっていくことを願います。

この本を読まれた小規模企業の経営者の方がいらっしゃいましたら、簡単に真似できるものではないと思って頂いた方がいいと思います。

税務面や労務面でクリアしないといけない問題がたくさんあります。

純粋に、働き方や社員のためを思ってやらないと、会社にとって都合の良い制度になってしまい、逆効果になってしまう可能性が高いと思います。

【編集後記】

タニタの社長のことを知らないので、一方的に悪く書いてしまったように思います。

タニタに限らず、みんなにとって良い働き方が普及する世の中になっていけばいいなと思います。


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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ 千葉県生まれ、千葉県育ち。 四街道市在住。 小規模企業の節税に強い、渡邉ともお税理士事務所 代表税理士。 節税をしながら、長期の資産形成をサポート。