税金は、個人の事情に応じて変わってきます。
その収入に税金を課すことが適切かどうか、その人に税金を課すことが適切かどうかによって、税金の計算が変わるのです。
人に聞いたり、ネットで読んだ情報をすぐに信じる前に、その情報が自分に当てはまるかどうか、確認するようにしましょう。
所得控除
所得控除とは、個人の事情を考慮して、一定の要件に該当する人に対しては、所得金額から一定の金額を控除する制度です。
所得控除には、以下のようなものがあります。
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
上記に該当するような場合は、税金を負担する力が少し低いだろうということなどの理由で、一定の金額を所得から控除します。
いくつか見ていくと、医療費控除は、医療費を一定金額以上支払った場合に控除するものです。
小規模企業共済等掛金控除は、このブログでもよく取り上げている小規模企業共済や確定拠出年金の掛金を支払った場合に控除されるものです。
小規模企業共済等掛金控除の「等」の字に、確定拠出年金が含まれていると思ってください。
障害者控除、寡婦(寡夫)控除、配偶者控除、扶養控除などは、条件に該当するかどうかで、控除を受けられるかどうかが決まります。
これに対して、小規模企業共済等掛金控除や生命保険料控除、地震保険料控除などは、これらの金額を支払った場合に控除を受けることができます。
ですから、このブログでも、「小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛金を支払うと節税になりますよ」とお伝えしています。
しかし、小規模企業共済の加入資格は、小規模企業の経営者とその配偶者、あるいは個人事業主とその配偶者などに限られています。(配偶者の加入資格には要件があります)
いくら、節税になるからといって加入資格がない人にとっては関係のない話になってしまいます。
個人型確定拠出年金も、その人によって節税効果は大きく変わります。
収入のない専業主婦などは、節税効果はほぼありません。
また、多額の退職金をもらう予定がある人にとっては、受取の時期や方法まで考えないと、どのくらいの節税効果になるかわかりません。
生命保険料控除については、保険料の全額が所得控除になるわけではなく、また、控除額の上限も決まっています。
節税の効果という点では、掛金の全額が所得控除となる小規模企業共済等掛金控除と、掛金の一部しか所得控除にならない生命保険料控除では、大きな差があるのです。
所得税の税率
所得税の税率は、土地や建物の譲渡による所得、株式の譲渡による所得など、他の所得と合わせず分離して課税されるものを除くと、所得が高いほど税率が高くなる超過累進税率という制度が採用されています。
給与所得や事業所得、不動産所得、雑所得などは、これらを合算して課税されます。
合算して課税されることを、総合課税と言います。
この総合課税される所得に対する税率は、5%から45%まで、なんと9倍もの差があるのです。
自分が何%の税率が適用されているかを把握していなければ、節税の効果もわからないということになります。
年によって、所得の額に大きな変動がある個人事業主の場合だと、年によって税率が大きく変わることも珍しくありません。
先ほど書いた所得控除についても、「所得控除の額×税率」分の税金が安くなります。
個人型確定拠出年金を年に36万円支払ったとしても、税率が5%と45%の人とでは、節税の効果は、144,000円も変わってきます。
仮に、税率が5%の人と45%の人がお互いの税率を知らないとして、SNSなどで、同じ個人型確定拠出年金についての話をしていたとしても、節税になる金額については、全く違った話をしている可能性があるのです。
節税になるという点では同じかもしれませんが、効果という意味では全く違います。
まとめ
税金のことを体系的に理解している専門家は、個人の事情によって異なるということを当たり前のようにわかっていますが、一般の人は税金を体系的に理解している人は少ないと思います。
だから、人の話やネットの記事などで、一部分を切り取ったような節税対策がどのくらい自分にとって効果があるのかがわかりづらいのです。
中には、その人には当てはまらずに全く節税効果がないものまであります。
先ほども話した、専業主婦にとっての個人型確定拠出年金などが、いい例です。
専業主婦の人が、ネットで個人型確定拠出年金は節税になるという記事を読んで加入したとしても、節税という点では、あまり意味がないのです。
わたしは、ブログでは、その記事を読んで欲しい人を、なるべく最初に書くようにしています。
小規模企業の社長や、個人事業主向けの記事が多いですが。
税金については、個別の「木」を見るのも大事ですが、全体としての「森」を見るのはもっと大切です。
全体の森を見ることは、一般の人には大変なことも多いです。
影響が大きい場合は、専門家を頼るのも一つの手だということを知っておいた方がいいでしょう。
【編集後記】
先日、わたしの出身地での小中学校の統廃合の記事をネットで見かけました。
気になったので、ネットで母校の現在の児童数や生徒数を調べてみました。
小学校については、当時の1/3以下、中学校については当時の1/4以下になっていました。
少子高齢化や過疎化のニュースはよく目にしていましたが、実際に自分の母校の児童や生徒がこんなにも減少している現実を知ると、何とも寂しい気がしますね。