粉飾決算に一度手を出してしまうと、なかなか抜け出せなくなる

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経営破綻したてるみくらぶは、粉飾決算をしていたと報道されています。

今回は、粉飾決算とは何か、粉飾決算をするとどうなるのか、ということについて書いてみます。

このブログでは、毎回そうなのですが、今回も小規模企業を前提として書きます。

粉飾決算とは

粉飾決算とは、不正な会計処理を行って、虚偽の決算報告書を作成することです。

不正な会計処理を行う目的は、一般的には二つあります。

一つは、不正な会計処理を行うことによって、利益を減らし、税金を少なくすることを目的とする、いわゆる脱税行為です。

もう一つは、不正な会計処理を行うことによって、対外的に利益を多く見せることを目的とするものです。

一般的には、小規模企業の場合の粉飾決算といえば、こちらの利益を多く見せるための粉飾決算をいうと思います。

今回は、脱税目的ではなく、利益を多くみせかけるための粉飾決算について書きます。

利益を圧縮する脱税行為も、利益を多く見せかける粉飾決算も、悪いことです。

しかし、小規模企業の場合の利益を多く見せかける粉飾決算については、税務署は税金を多く取れることになるので、あまり問題にならないこともあります。

もちろん、税務署が問題にしないからといって、粉飾決算をしてもいいということにはなりません。

粉飾決算の目的

なぜ、利益を多く見せるために粉飾決算を行うのでしょうか。

小規模企業の場合は、株主と経営者が同じことが多いので、株主のためではありません。

一番多い理由は、金融機関対策でしょう。

新規に借り入れるにしろ、既に借入をしているにせよ、金融機関に対しては、黒字の決算報告書を見せた方が印象がいいです。

赤字では、借入ができなかったり、融資を引き揚げられてしまう恐れもあります。

二つ目の理由は、許認可の問題です。

建設業とか、旅行業とか、赤字だと許認可に影響を与える場合があるので、黒字を装います。

三つ目の理由は、対取引先です。

大きな会社と取引をする際には、決算報告書の提出を求められることがあります。

この場合でも、業績が悪いと、取引をしてもらえない可能性があります。

粉飾決算の方法

1.架空売上の計上、または売上の前倒し計上

一番安易な方法は、架空の売上を計上することでしょう。

実際にはない売上を計上すれば、その分利益が増えます。

あからさまに架空の売上を計上するというよりは、本来は翌期以降に計上するはずの売上を当期に前倒しして計上する方法を取ることが多いのではないでしょうか。

2.仕入や人件費その他の経費をなかったことにする、または翌期以降に計上する

仕入や人件費などの経費をカットすると、利益は増えます。

実際に行われるのは、完全に経費をなかったことにするのではなく、期末現在でまだ支払っていない買掛金や未払金、未払費用などを計上しないという方法だと思います。

この場合は、翌期の支払った時に経費を計上することが多いようです。

3.在庫の過大計上

期末の在庫を過大に計上しても利益は増えます。

過大になった在庫は翌期の期首商品棚卸高となり、翌期の経費に算入されます。

4.減価償却費を計上しない

減価償却費を計上しないという方法も考えられます。

法人の場合は、減価償却費の計上は、強制ではありませんので、減価償却費を計上しないことを粉飾決算というかどうかは意見がわかれるところです。

いずれの方法によって粉飾決算をしたとしても、基本的には利益の計上される期がずれることになり、トータルでの損益は変わらないことになります。

トータルでの損益が変わってしまう粉飾決算は、更に悪質度が増すといっていいでしょう。

さすがに、そこまでやる会社はほとんどないのではないでしょうか。

そして、これらの処理は、消費税に影響を与えるものと、与えないものとに分かれます。

売上の前倒し計上と、買掛金や未払金のカットは、当期の消費税が増えるのに対し、在庫の過大計上や減価償却費を計上しない方法では、消費税に影響を与えません。(在庫の過大計上の場合は、消費税に影響を与えることもあります。)

粉飾決算が与える悪い影響

ここまで読んで、「なんだ、利益を多く計上する粉飾決算はしてもいいのか」と思った人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

一度粉飾決算をしてしまうと、決算報告書が真実の姿を映さなくなり、元の正常な姿に戻すことが難しくなってしまいます。

先ほど、利益を計上する期がずれるが、トータルでの損益は変わらないと書きました。

ということは、当期に100万円の売上の前倒し計上をしたとしたら、翌期は、マイナス100万円からのスタートになるということです。

翌期に業績が回復して、そのマイナスを取り返せれば、まだいいのですが、なかなかそうはいきません。

そうなると、前倒しする売上の金額がどんどん増えていくことになり、いずれは、真実の姿に戻すことが不可能な状態になってしまいます。

今回のてるみくらぶも、まさに、そのような状況だったのではないでしょうか。

そして、粉飾をし続けたことにより、粉飾の金額が大きくなり、周りに与える影響も大きくなってしまうのです。

てるみクラブが粉飾決算をしていなければ、もっと前に経営破綻をしていて、被害はもっと少なく済んだかもしれません。

あるいは、経営破綻をする前に、事業を買ってくれる会社が現れて、一般消費者が被害を被ることなく済んだかもしれません。

しかも、社長は多額の粉飾決算をしていながらも、高額の役員報酬をもらっていました。

まとめ

小規模企業の粉飾決算について、書いてきました。

粉飾決算をしてしまうと、会社の本来の成績がわからなくなってしまいます。

経営判断を誤ってしまう原因にもなります。

また、粉飾決算を続けることで、粉飾の金額がどんどん膨れ上がってしまうことは、延命治療にも似ているところがあるような気がします。

人の命と、会社の命を同じように話すことは不謹慎なことかもしれません。(気を悪くする方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。)

しかし、粉飾決算は、本来であれば、継続できない会社を継続させてしまうことにもなりかねません。

その結果、一般消費者や債権者の被害が大きくなってしまうこともあります。

安易に粉飾決算をしないように、十分に気をつけましょう。

【編集後記】

桜の季節になるのに、気温が低く見頃がいつになるのか、難しいです。

東京の都心と千葉とでは、桜の咲き具合が随分と違うみたいで、わたしの家の周りでは、まだまだという感じです。

来週末にはお花見に行きたいと思っていますが、どこの桜が見頃になっているでしょうか。

 

今日の体重、お腹周り 今日は朝食前に体重を図り忘れたため、なし。

間食をやめた空腹対策として、1日1つマンナンライフの蒟蒻畑を食べるようにしました。


 

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ 千葉県生まれ、千葉県育ち。 四街道市在住。 小規模企業の節税に強い、渡邉ともお税理士事務所 代表税理士。 節税をしながら、長期の資産形成をサポート。