個人型確定拠出年金(iDeCo)について、見出しで必要以上に効果をあおることはしない

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2017年から、誰でも個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することができるようになり、ネットの記事や書籍などでも、個人型確定拠出年金に関するものを目にすることも多くなりました。

その中には、「最大で55%の節税効果」とか「年率○○%」とかいう言葉も見受けられます。

これらの言葉だけを見ると、個人型確定拠出年金について誤解してしまう人もいるだろうなぁ、と思います。

誤解だけではなく、誤解に気づけば、個人型確定拠出年金について、マイナスのイメージを持ってしまうかもしれません。

このブログでも、個人型確定拠出年金については積極的に記事にしていますが、加入を検討している人が、個人型確定拠出年金の制度をきちんと理解して加入してもらいたいなぁ、と思っています。

節税効果は人それぞれ

「最大55%の節税効果」という言葉は間違っているわけではありません。

しかし、55%の節税効果がある人はかなり限られます。

所得税は、所得が高ければ高いほど税率が高くなります。

所得税の最高税率が45%であり、住民税は一律10%なので、合わせて55%になります。(復興特別所得税を除く)

55%の節税効果がある人は、一番高い55%の税率が摘要される人だけであり、55%の最高税率が摘要されるのは、課税される所得金額が4,000万円超の人だけです。

割合でいえば、1%にも満たない人です。

4,000万円というのは、収入金額でもなく、所得金額でもなく課税される所得金額です。

事業所得を営んでいる人であれば、収入(売上)から経費を引いた金額が所得の金額です。

さらに、その所得の金額から、所得控除の額を控除したものが、課税される所得金額です。

給与所得者でいうと、額面で4,500万円くらいをもらう人でなければ、課税される所得金額が4,000万円超にはなりません。

記事にインパクトを出したいのだとは思いますが、「最大55%」という言葉を見て、そんなに節税効果があるのかと思うのはやめましょう。

これは、住宅ローン控除にも同じようなことが言えます。

住宅ローン控除も、10年で最大400万円とか、500万円の節税効果があると言われることがあります。

しかし、これも節税効果があるのは、もともと自分が納めるはずだった所得税や住民税の額の範囲内だということは忘れてはいけません。

もともと10年で200万円の所得税や住民税を納める人であれば、最大でも、200万円の節税効果ということになります。(200万円の節税効果はとても大きいですが)

さらに、住宅ローン控除の場合は、その年の12月31日現在の借入金の残高の1%が控除限度額になります。

10年間で400万円の住宅ローン控除を受けるには、10年後に4,000万円以上の借入金がある場合です。

年率○○%はふさわしくない

最大で節税効果が55%というのは、該当する人がかなり少ないけれど、いるにはいます。

そういう意味では、「最大55%の節税効果」は間違いではありません。

しかし、この「年率○○%」というのは、表現として正確でないなと思います。

この○○%は、大体15%とか、20%とか書かれていることが多いようです。

年率55%という表現は見たことがないかもしれませんが、わたしが見たことがないだけで、どこかで使われているかもしれません。

例として、税率20%の場合で話を進めます。

この場合に、年率20%と言うと、年間276,000円の掛金を支払ったとすると、そのお金が1年で331,200円になると思いますよね。

税率が20%の人の場合の1年目は、確かに55,200円の節税効果があり、支払った掛金の276,000円と、節税効果の55,200円で年率20%でお金が増えたような効果はあります。

では、2年目以降はどうでしょうか。

2年間の掛金の総額は、552,000円です。

それに対して、節税効果は1年目と同じ55,200円です。

これでは、掛金の累計額に対して年率10%しかありません。

3年目以降も、掛金の累計額はどんどん増えるのに対して、節税額は同じであり、掛金の累計額に対する年率はどんどんと下がっていきます。

通常、資産形成で年率と言えば、その時の資産総額に対して何%増えるかということを言うと思います。

預金を年率0.2%の利率で毎年100万円積立てるのあれば、1年目は100万年に対して0.2%増えますが、2年目は200万円に対して0.2%増えます。

3年目以降も積みあがった元本の総額に対して、利率が適用されます。

こう考えるのが普通ではないでしょうか。

個人型確定拠出年金の節税効果は、あくまでも、その年に支払った掛金に対してのものです。

これを年率20%というのは、適切な表現とは思えません。

金融機関が、キャンペーンと称して、「定期預金の金利を年3%にします。」と書いて、実はその3%が適用されるのは最初の3か月だけというのと同様です。

4か月目からは、通常の年0.1%にも満たないような金利になってしまうのです。

そして、その3か月というのは、小さくわかりづらく書いてあったりします。

個人型確定拠出年金で、年率○○%というのは、これと同じようなことだと思うので、やめたほうがいいでしょう。

まとめ

個人型確定拠出年金には、メリットもデメリットもあります。

これらのメリット、デメリットをきちんと把握して加入を検討したいものです。

タイプ別 個人型確定拠出年金(IDeCo)のおすすめ度

2017.03.01

確定拠出年金に加入する前にデメリットも知っておこう

2016.09.22

個人型確定拠出年金で節税しながら資産形成しよう。

2016.03.22

伝える側も、必要以上にあおるような記事は避けた方がいいでしょう。

個人型確定拠出年金について、必要以上にあおるような記事を見かけることがあるので、このような記事を書いてみました。

わたし自身は、個人型確定拠出年金は、老後のお金を準備するためのいい制度だと思っています。

しかし、万人にすすめるものでもないと思っています。

それぞれが、個人型確定拠出年金についてのメリット、デメリットを把握したうえで、この制度が普及していって欲しいです。

【編集後記】

都心では、早くも桜が満開とのことですが、アイキャッチ画像の通り、我が家から見える桜はまだほとんど咲いていません。

都心とは、こんなにも差があるんですね。

今日の体重 75.3kg(ダイエット開始から△1.2kg) お腹周り 92cm(ダイエット開始から△4cm)


 

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ 千葉県生まれ、千葉県育ち。 四街道市在住。 小規模企業の節税に強い、渡邉ともお税理士事務所 代表税理士。 節税をしながら、長期の資産形成をサポート。