所得税の青色申告者の特典として、損失を繰越せるということを知っている人は多いでしょう。
では、損失が出ても翌年に繰り越せるからといって、損失をだしても税金上の不利はないのでしょうか。
損失は繰越せても、本来控除することができるはずの所得控除は捨てることになります。
損失を繰越せば、トータルでの所得は同じになる
例えば、3年間の所得が以下の通りだったとします。
ケース1 | ケース2 | |
平成28年 | △2,000,000 | 1,000,000 |
平成29年 | 1,000,000 | 1,000,000 |
平成30年 | 5,000,000 | 2,000,000 |
3年間トータルの所得 | 4,000,000 | 4,000,000 |
ケース1では、平成28年が赤字ですが、この赤字は平成29年に100万円控除され、さらに平成30年にも100万円が控除されます。
結果として平成29年は所得が0になり、平成30年は、400万円が所得金額になります。
対して、ケース2は赤字の年がありませんので、それぞれ100万円、100万円、200万円が所得金額になります。
この場合、ケース1でもケース2でも3年間のトータルの所得金額が400万円です。
損失を繰越すことによって、3年間のトータルの所得金額は同じになります。
損失を繰越しても、トータルでの所得税は同じにならない
所得税の計算の流れは以下の通りです。
1.各種所得の金額を計算する
2.総合課税される各種所得の金額を合算する(課税標準額)
3.所得控除の額を計算する
4.2の課税標準額から3の所得控除額を控除する(課税される所得金額)
5.4の課税される所得金額に税率を乗じて、納付する所得税額を計算する
1の所得金額が赤字であれば、その後の計算はほとんど必要がなくなり、税額も0になります。
前年以前から繰越されてきた損失があるときは、2の段階で控除します。
前年の損失を控除して0以下になれば、この後の計算はほとんど必要なくなります。
先ほどのケース1の場合でいうと、平成28年も平成29年も、2の段階で所得が0以下になります。
従って、平成28年も平成29年も所得税は0になります。3以降の計算過程はほとんどなくなるのです。
2の段階で所得がプラスでなければ、3の所得控除を引くことができないということになります。
そして、この所得控除の金額は、引ききれなかったからといって、翌年以降に繰り越すことはできません。
先ほどのケースで、所得控除を毎年100万円として計算すると、所得税の額は以下のようになります。
ケース1 | ケース2 | |
平成28年 | 0 | 0 |
平成29年 | 0 | 0 |
平成30年 | 202,500 | 50,000 |
3年間トータルの所得税 | 202,500 | 50,000 |
※復興特別所得税は、考慮していない
ケース2では、平成28年も平成29年も所得控除を引くと、所得が0になるので所得税は発生しません。
ケース1とケース2では、3年間のトータルの所得金額は同じなのに、所得税の合計は152,500円もの差があります。
ケース2では、3年間で所得控除を300万円控除しているのに対し、ケース1では、平成30年の100万円しか控除していないことが、この所得税の差につながっています。(税率の差もありますが)
まとめ
青色申告の特典として認められる損失の繰越ですが、控除できるはずの所得控除を控除できないということは知っておいた方がいいでしょう。
3年間のトータルの所得合計が同じになっても、3年間の所得税の合計は同じにはならないのです。
このブログで、節税効果が高いとしておすすめしている、小規模企業共済や個人型確定拠出年金も、所得があってこそのものです。
赤字の年に支払った、小規模企業共済や個人型確定拠出年金の掛金は1円も控除することができません。
誰でも控除できる基礎控除の38万円も赤字では控除できません。
損失を繰越せるといっても、プラスになるに越したことはないのです。
所得控除の他に、住宅ローン控除も、赤字では控除することができません。
所得控除をフルに使って節税効果を高めるためにも、損失は繰越せるから、いいやと思うことのないようにしましょう。
※事業所得が赤字でも、他の分離課税の所得(土地や株の譲渡益など)がある場合などは、そちらの所得から、所得控除を控除できる場合もあります。
【編集後記】
週末は、お花見に行く予定でしたが、天気が悪かったため、キャンセルしました。
我が家から見える桜は満開です。(アイキャッチ画像)
今日の体重 73.8kg(ダイエット開始から△2.7kg) お腹周り 92cm(ダイエット開始から△4cm)
※今日は朝食前に体重を図り忘れたため、昨日の朝の体重とお腹周りです。