クラウド会計を利用すると、「自動で仕訳が作成され確定申告書まで自動で作成できてしまう」、そんな風に考えている人もいるのではないでしょうか。
確かに、預金取引やクレジットカードでの取引は自動で取り込まれ、仕訳も自動で作成することもできます。
確定申告書も、質問に答えるだけで作成できてしまうかもしれません。
しかし、仕訳の入力や確定申告書の作成ができることと、その確定申告書が正しいことや、節税ができているかどうかということは、残念ながらべつものです。
自動で取り込まれたものが正しいかどうかは人間の判断が必要
クラウド会計で、預金取引を自動で取り込んで仕訳を登録したとします。
登録は自動でできますが、登録された仕訳が正しいかどうかの判断は自分でしなくてはいけません。
会計ソフトの入力は、入力して終わりという訳にはいかないのです。
正しいかどうかを判断するには、税務や会計の知識が必要になります。
ある程度の知識があれば、それなりのものはできるかもしれません。
しかし、それが正しいかどうかはわかりません。
つまり、自動で登録されたあとに、それが正しいかどうかの確認をする必要があります。
クラウド会計とAI(人工知能)を結び付けて語られることが多いのですが、自動での取り込み自体は、AIとあまり関係ないように思います。
あらかじめルールを決めて、この明細のときは、この仕訳として取り込むというだけのことですから。
これがAIなのかというと、よくはわかりません(AIが勘定科目を推測しますが、この推測はあてにできません)。
もちろん、便利な機能であることに変わりはありません。
一つ一つ入力するのと、自動で入力してくれるのでは、手間などに雲泥の差があります。
しかし、ルールを決めて自動で取り込んでくれるのだとして、そのルールが間違っていたらどうでしょう。
例えば、主要な取引先で「A社」という会社があったとします。
「A社」という明細のときは、「商品仕入高」という勘定科目で入力するのが正しいことになります。
しかし、仕訳ルールを作成するときに間違えて「事業主貸」で登録されるようにしてしまったら、「A社」という明細のときは、全て「事業主貸」で処理されてしまいます。
これでは、全く違う数字で確定申告書が作成されてしまいます。
自動で入力されるのは、大変便利な機能なのですが、間違えたルールが設定されているときは、間違ったものができてしまいます。
自動で入力できることと、それが正しいかどうかは全くべつのものということです。
仕訳ルールが正しいかどうかの判断をクラウド会計ソフトはしてくれません。
入力が正しいことと、節税もまたべつのもの
では次に、入力が正しくできたとして、それが節税になっているかどうかが問題です。
実は、正しい入力と節税とはべつのものなのです。
経理処理の方法で税額が変わってくることもあります。
経理処理による税金の有利不利の判断は、人間がしなくてはいけません。
消費税では、計算方法も自分で判断しなくてはいけません。
AIが自動で判断してくれる訳ではありません。
10年後か20年後には、AIが節税まで考えてくれる時代が来るかもしれませんが、ここ数年でそのような時代になるとも思えません。
節税を検討するにも人の力が必要なのです。
自分でわからなければ、専門家を利用するのも手
正しい入力ができているかどうか、節税できているかどうかは自分では判断できない、というのであれば、専門家を利用するのが手っ取り早いです。
宣伝をするみたいになってしまいますが、現時点ではそういうことになります。
「自分の売上規模では」とか、「大して税額も発生していないし」と思うようであれば、単発の相談を受けるのも手です。
単発の相談を受け付けている税理士を探して相談をしてみましょう。
そのうえで、自分で申告をできるようであれば、自分で申告をするといいでしょう。
専門家に依頼したほうがいいと言われたら、専門家に依頼することを考えるのもいいでしょう。
その際に、単発で相談した税理士と、確定申告を依頼する税理士をわけても問題ありません。
自分に合った税理士を探すようにしましょう。
クラウド会計は便利なソフトです。
しかし、現時点では、クラウド会計を利用したからといって、確定申告書の作成まで全てお任せという訳にはいきません。
20年後くらいには、そういう時代が来るかもしれません。
しかし、現時点では、入力や申告書の作成ができることと、節税できているかどうかはべつものです。
不安があるようでしたら、一度専門家に相談することをおすすめします。
【編集後記】
10月20日に金融庁の会議室で開催される「つみたてNISA Meetup in 東京」に参加することになりました。
この意見交換会は、今までにも何回か開催されていますが、今回のテーマは「職場つみたてNISAの普及について」とのことです。
金融庁との意見交換会に参加する機会なんてめったにないことなので、参加をするのが楽しみです。