一人社長の退職金と退職金にかかる税金

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一人社長の退職金と、退職金にかかる税金について考えます。

前提としては、社長一人のみの会社で、35歳で独立をして65歳で引退するとします。

後継者はなしで、引退と同時に会社を解散することとします。

3つの退職金

一人社長の退職金としては、以下の3つの退職金が考えられます。

・会社からの退職金
・小規模企業共済
・iDeCo(個人型確定拠出年金)

会社員の場合、退職金は会社から支給されるイメージですが、一人社長の場合は、退職金は自分で貯めるイメージです。

自分が退職するときに、お金がどこからか湧いてくることもありませんし、誰かが「お疲れ様でした」と言って、退職金をくれる訳でもありません。

自分で貯めなくてはいけないのですが、どうやって貯めるのかが問題です。

1.会社からの退職金

会社からの退職金は、基本的には、利益を出して税金を払って残った金額を貯めるイメージです。

例えば、100万円の利益を出して30万円の税金を払って、残った70万円を貯めていく。

これを30年続ければ、2,100万円のお金が貯まります。

税金を払って残った金額を貯めるという点がポイントです。

実際は、35歳から退職金を貯めることを意識することは少ないと思いますが、あくまでもイメージとして考えてください。

安定して利益が出ることが予測されるのであれば、生命保険を利用することも考えられます。

2.小規模企業共済

小規模企業共済は、小規模企業の経営者のための退職金制度で、掛金が全額所得控除になるという税制上の大きなメリットがあります。

会社からの退職金はもちろん会社で支払うものですので、会社がお金を貯める必要があります。

これに対して、小規模企業共済は、個人で貯めるものです。

社長が会社からもらった役員報酬の中から、掛金を支払います。

掛金は月額7万円が上限です。

支払った掛金は、社長個人の所得税を計算するうえで全額控除されますので、社長個人の所得税にとっての節税効果がとても高いものになります。

仮に、月額3万円を30年かけると、1,080万円のお金が貯まります。

この場合で、社長の所得税と住民税を合わせた税率が30%だとすると、30年間で324万円もの節税効果があることになります。

3.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoも、節税効果としては小規模企業共済と同じで、掛金が全額所得控除になります。

一人社長は会社で厚生年金に加入しますから、iDeCoの掛金の上限は、月額23,000円です。

現時点では、iDeCoは60歳までしか掛金を支払うことができないので、35歳から月額23,000円で加入したとすると、25年間で、690万円のお金が貯まります。

社長の所得税と住民税を合わせた税率が30%だとした場合で、25年間での節税効果は2,484,000円になります。

iDeCoの場合は、自分で掛金を運用しますので、運用次第で資産の額は変わってきます。(今回の記事では、掛金がそのまま貯まっていくということにします)

iDeCoを始める場合は、資産運用について勉強をする必要があることには注意しましょう。

今回のケースでは、3つの退職金を合わせて3,870万円になりました。

退職金にかかる税金

1.会社からの退職金

会社からもらった退職金については、もらった退職金の額から退職所得控除額を控除した金額に1/2を乗じて退職所得の金額をもとめます。

そして、退職所得の金額に対して、税率をかけて税額を計算します。

退職所得控除額は勤続年数に応じて、以下のように変わります。

勤続年数20年以下・・・勤続年数×40万円(最低80万円)
勤続年数20年超・・・800万円+70万円×(勤続年数-20年)

今回の例で言うと、以下のようになります。

800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円

もらった退職金2,100万円から、退職所得控除額1,500万円を差し引き、600万円になります。

さらに、この金額に1/2を乗じた300万円が退職所得の金額となります。

退職金については、分離課税になりますので、他の所得とは合算されずに税額をもとめます。

300万円の場合の、所得税と住民税を合わせた税額は、502,500円です。

2.小規模企業共済

小規模企業共済を一時金としてもらった場合は、退職所得扱いになり、基本的には会社からもらった退職金と同じ計算になります。

今回のケースで、仮に会社からもらった退職金がなかったとした場合の、小規模企業共済の一時金にかかる所得税と住民税は以下の通りになります。

退職所得控除額の計算は、先ほどの例と同じになり、1,500万円ですから、1,080万円よりも大きくなり、退職所得の金額は0です。

従って、退職金にかかる税額も0です。

3.iDeCo

iDeCoの場合の計算も同様になりますが、勤続年数は掛金を支払っていた期間ですから、25年で計算します。

60歳以降掛金を支払うことはできませんが、引退する65歳のときに一時金をもらうことができますので、今回は65歳で一時金をもらうと仮定します。

勤続年数25年の場合の退職所得控除額は1,150万円です。

他の退職金がないとした場合、退職所得控除額は1,150万円になり、もらう金額の690万円よりも多くなりますので、退職所得の金額は0になります。

税額も発生しません。

4.退職金を複数もらった場合

退職金の計算がこれで終わりだったら、もの凄く嬉しいのですが、そういう訳にはいきません。

退職金を複数もらう場合の退職所得控除額の計算については、複雑になります。

全てを説明すると長くなりますが、今回のように、勤続年数がすべて同じで、同じ年に退職金をもらった場合については、退職所得控除額は二重には控除できないということになります。

会社からもらった退職金と、小規模企業共済、iDeCoの3つを合わせた退職金から控除できる退職所得控除額は、1,500万円になります。

ですから、正しくは以下のようになります。

退職金の収入金額 2,100万円+1,080万円+690万円=3,870万円
退職所得控除額 1,500万円
退職所得の金額 (3,870万円-1,500万円)×1/2=1,185万円

この場合の所得税と住民税を合わせた税額は、3,559,500円となります。

「むむむっ!!」

と思った人も多いと思います。

「退職金に対する税金って優遇されてるんじゃないの?!」

そう思われる気持ちもわかります。

しかし、もらった退職金3,870万円に対して約356万円の税額ですから、率にすると、約9.1%です。

所得税で総合課税される所得に比べれば、優遇されているのは明らかです。

さらに、小規模企業共済とiDeCoで30年間にわたって、5,724,000円もの節税効果があったことも見逃せません。

退職金や、退職金制度には大きな税制優遇があることは間違いないのです。

退職金のお得なもらい方

さらに退職金のもらい方次第では、もう少しお得になります。

一人社長の場合、会社からもらう退職金や小規模企業共済は、基本的にもらえるタイミングは引退するときです。

しかし、iDeCoについては60歳になったらもらうことができます。

60歳でiDeCoの一時金をもらい、65歳で引退して、会社からの退職金と小規模企業共済の一時金をもらうという方法があります。

この場合は、二重に退職所得控除額を使うことができるのです。

その結果、iDeCoについては、税額が0になります。

会社からの退職金と、小規模企業共済の一時金を合わせた税額は、2,136,000円になります。

iDeCoの一時金をもらうタイミングの差で、税額が1,424,000円も減少します。

まとめ

一人社長の退職金と税金について書いてみました。

40代以下の人にとっては、退職金と言ってもあまりピンとこないかもしれませんが、一人社長の場合は、退職金の原資を自分で貯めなくてはいけません。

長期にわたってコツコツと貯めることが大切です。

そのときに、退職金がどれだけ税制上恵まれているかを知っておくと、上手く貯めることができるのではないでしょうか。

小規模企業共済やiDeCoについて、もらうときに税金がかかるなら、ただの税の繰り延べじゃないかという意見を聞くことがあります。

税の繰り延べには間違いないのですが、もらうときにも税の優遇があるので、税の繰り延べをそれほど嫌う必要はありません。

例え、税金がかかったとしても、退職所得の金額は1/2されていますし、分離課税なので、総合課税に比べると税率も少し低くなります。

さらに、一人社長の場合は、もらい方を工夫することで、退職金にかかる税金を減らすこともできます(実際にもらうときには、税制が改正されている可能性はありますが)。

最後に、税制上優遇されている制度を利用するだけでも、それなりのお金が貯められるということも覚えておきましょう。

※今回の記事では、復興特別所得税を考慮していません。平成49年12月31日までは、復興特別所得税が別途発生します。

【編集後記】

わたしにしては多く、今月は4回も飲み会がありました。

まぁ、12月なのでしょうがないかなと思いますので、気にせずに食べるようにします。

リバウンドしないように正月明けからは食事の量に気をつけることにします。


 

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