法人と個人事業主では、損益計算書や貸借対照表にどのような違いがあるのでしょうか。
今回は細かなことには触れずに、大きな違いについて書いてみます。
損益計算書の違いは、個人事業主には役員報酬がないこと
法人の損益計算書にあって、個人事業主の損益計算書にないもの、それが役員報酬です。
ここが一番の違いと言っていいでしょう。
一人社長の場合で言うと、法人の損益計算書の役員報酬と税引き前当期利益の合計額が、個人事業主の損益計算書の青色申告特別控除前の所得金額になります。
ですから、法人成りした場合は、これらの金額を比較すると、法人成りして儲けが増えたのかどうかの一つの目安になります。
実際には、法人成りしたことで経費に計上できるものが増えることもあるので、一概には言えません。
あえて、経費を増やすことを狙って法人成りをしているケースもあります。
個人事業主には役員報酬がないので、当たり前といえば、当たり前のことです。
自分の儲けを計算しているので、自分に経費を支払うことはできません。
売上から経費を引いた金額が自分の儲け=給料のイメージです。
法人の場合は、法人自体に法人格があり、個人と法人は別のものとみなされます。
ですから、法人から個人に役員報酬を支払うことができます。
言い方を変えると、役員報酬としてもらわなければ、会社がいくら稼いでも個人で使えるお金にはなりません。
そして、利益を全て役員報酬として支払う必要はなく会社に利益を残して、会社にお金を貯めることもできます。
貸借対照表の違いは、事業に関係のない資産や負債も計上されること
法人の貸借対照表には、当然ですが、会社の資産や負債しか計上されません。
社長借入金があるじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、社長借入金は社長にとっては個人の資産ですが、会社から見れば、会社の負債ですから、会社の貸借対照表に計上されて当然のものです。
プライベートな支出は経費にならないので、損益計算書にはプライベートなものはのってきません。
しかし、貸借対照表では、区分があいまいなものだったり、事業とプライベートの両方に使われるものなどもあるため、計上されるものについては厳密になってはいません。
現金預金
お金には色がありませんから、貸借対照表にのっている現金預金が事業用のものなのかプライベートのものなのかの区別はつきません。
どちらでも、個人のものということに変わりはありません。
個人が、そのお金を事業のために使うか、プライベートのために使うかは、個人の自由なのです。
仮に、屋号付の預金口座が貸借対照表にのっていなかったとしても、税務上問題になることはありません。
もちろん、仕事に全く使わない預金口座が計上されていたとしても問題になることはありません。
固定資産
個人事業主の場合、建物や車両などが事業用とプライベート用の共用になっている場合があります。
そういった場合でも建物や車両の総額を貸借対照表にのせるのが一般的です。
例えば、3,000万円の自宅兼店舗があって事業割合が50%だったとします。
貸借対照表には半分の1,500万円ではなく、3,000万円で計上します。
仮の耐用年数を30年とすると毎年100万円の減価償却費が計上されます。
この内、経費になるのは事業割合50%の50万円です。
仕訳でいうと、次の通りです。
減価償却費 500,000 建物 1,000,000
事業主貸 500,000
借入金
自宅兼店舗を借入金で取得した場合などの借入金も総額で計上することが多いです。
事業割合50%で元本10万円、利息を2万円支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借入金 100,000 普通預金 120,000
支払利息 10,000
事業主貸 10,000
利息は事業分のみ計上されますが、借入金は総額で計上されます。
まとめ
法人と個人事業主の損益計算書、貸借対照表の相違点について書いてみました。
損益計算書の違いは、個人と法人の違いからそうなります。
個人には役員報酬がないので、役員報酬+会社の利益が個人事業主にとっての利益になります。
貸借対照表については、個人事業主の場合、プライベートの資産や負債と、事業用の資産や負債を厳密にはわけられないものがあったり、あえてわけないものもあります。
ですから、個人事業主の貸借対照表を見て財務分析をする場合は、その点を確認して行う必要があります。
そもそも個人の場合は、事業用とプライベート用を合わせたところで資産や負債を確認したほうがいいこともあります。
事業も生活の一部と考えることもできます。
事業所得の貸借対照表だからといって、プライベートのものは入っていないと決めつけないようにしましょう。
【編集後記】
花粉症の症状が出始めました。
わたしの場合、住む場所によって花粉症の症状が強く出たり、そうでなかったりします。
過去については、実家にいたときが一番症状が強く、市川や津田沼で一人暮らしをしていた時はあまり症状が出ませんでした。
四街道に来てからは、その中間くらいで、それなりにつらい症状になります。