個人事業主の中には、マネーフォワードクラウドやfreeeなどのクラウド会計ソフトを使って自分で確定申告をしている人も多いでしょう。
預金やクレジットカード、楽天やAMAZONの取引の明細を自動で取得できるのはとても便利です。
その際に、二重計上には気をつけなくてはいけないのですが、もう一つ気をつけたいのが、預金や未払金の残高です。
事業所得や事業的規模の不動産所得で、青色申告特別控除額65万円の控除を受けたい場合は、これらの所得にかかる取引を会計ソフトに入力して、貸借対照表を作成しなくてはいけません。
事業用の預金口座の取引は全て入力する
事業用の預金口座の取引は、通常は全て入力します。
事業用口座の全ての取引を入力することにより、貸借対照表の普通預金の残高が通帳と一致します。
通帳の残高と一致すれば、全ての取引が入力されていると思っていいでしょう。
クラウド会計を使っている人で、事業の収入や経費にかかる明細だけ、会計ソフトに入力している人がいます。
事業所得の金額はそれでも計算できるかもしれませんが、貸借対照表を作成するという点からは、おすすめできません。
事業用口座から、国民年金や国民健康保険料など事業所得の計算とは関係のないものが引き落としされたときは、事業主貸勘定で入力しておいた方が、データや残高を確認しやすいです。
そもそもの前提として、事業用の口座では、なるべく事業に関係する取引さけにすることが基本です。
国民年金や国民健康は事業所得とは関係ありませんが、個人的には、確定申告には関係するので、事業用口座から引き落としてもいいのかなとは思います。
他にも、所得税や住民税も経費にはなりませんが、事業用口座から支払ってもいいでしょう。
事業用の預金口座の明細は全て入力する代わりに、プライベートの預金口座の明細は取り込まない方が良いでしょう。
プライベートの預金口座からも少しは事業に関係するものがあるという場合は、事業に関係のあるもだけ手入力した方がいいです。
その際は、普通預金の勘定科目を使わずに、事業主貸勘定や事業主借勘定を使うといいでしょう。
事業用のクレジットカードも全て入力し、引き落としは事業用の口座にする
自分でしっかりと管理できる人は別ですが、クレジットカードはなるべく事業用のものを1枚作ることをおすすめします。
そして、事業用のクレジットカードの明細も全て入力するようにしましょう。
こちらも同じく、事業用のクレジットカードで事業とは関係のないものを買った場合は、事業主貸勘定で入力しましょう。
事業用のクレジットカードの明細を全て入力して、クレジットカードの引き落としを事業用の預金口座から支払えば、「未払金/クレジットカード」の残高も正しいものになります。
クレジットカードを事業用とプライベート用で分けないで、事業に関係のあるものだけ入力すると、「未払金/クレジットカード」の残高はよくわからない数字になってしまいます。
入力もれなどの間違いも発見しづらくなります。
事業用のクレジットカードの引き落としをプライベート用の預金口座から支払ってしまうと、「未払金/クレジットカード」の残高が残ったままになってしまいます。
こういう状態のデータを見ることはよくあります。
「未払金/クレジットカード」の残高を合わせるという点においては、クレジットカードの明細を全て取り込むということが良いと思います。
繰り返しになりますが、そのためにも事業用のクレジットカードがあると便利です。
AMAZONや楽天はちょっと面倒な面もある
AMAZONや楽天の明細も自動で取得できるのは大変便利です。
しかも、商品名なども取り込まれるので、摘要欄の入力もしなくて済みます。
クレジットカードの明細だとお店の名前しか書いてないことが多いので、結局摘要欄を自分で入力することになります。
ただし、AMAZONや楽天の明細を取り込む際も注意が必要です。
AMAZONや楽天を利用する人の多くは、プライベートでもAMAZONや楽天を利用します。
そうすると、事業用とそうでないものを区別する手間が発生します。
そして、事業用でないものは対象外とするのか、「事業主貸」で入力するのかという問題もあります。
「事業主貸」で入力して、支払いを事業用のクレジットカードにしておけば、「未払金/AMAZON」や「未払金/楽天」の残高は確認しやすくなります。
しかし、事業に関係のない買い物を会計データに入力するのも気が引けます。
税務調査の際に、プライベートで購入した物を税務署の人に見られる可能性があるので、あまり気持ちのいいものではありません。
AMAZONは事業用、楽天はプライベートというのもいい方法とは思いませんし、AMAZONや楽天のアカウントを2つ持つのも面倒です。
さらに、AMAZONや楽天の明細を取り込むと、クレジットカードの明細を取り込んだときに、「未払金」で処理する点も、ちょっと手間になります。
AMAZONや楽天の利用頻度が少ないのであれば、明細を取り込まずに、クレジットカードの明細を取り込んだ際に、摘要欄を入力するのがいいかもしれません。
まとめ
クラウド会計ソフトを使って青色申告特別控除65万円を受ける場合の壁となるのが、事業所得や不動産所得にかかる取引を全て入力するということと、貸借対照表を作成することです。
自動で取り込んだ明細の中から必要なものだけ登録をすると、貸借対照表が訳の分からない状態になってしまう可能性があります。
簡単ではないのですが、クラウド会計ソフトを使って青色申告特別控除65万円を受ける場合は、貸借対照表の残高にも注目するようにしましょう。
【編集後記】
本日、弊事務所は経営革新等支援機関として認定されました。
小規模の税理士事務所は、経営革新等支援機関の認定をどれだけ営業に活かしているのでしょうか。
わたしも、認定を受けたものの、現状では、支援機関としてこうやっていこうというものが思い浮かんでいません。