会社を設立したらやらなくてはいけないことがたくさんあります。
一番最初にやらなくてはいけないことは、手続き的なことよりも売上げの見込みを獲得することです。
売上げがあがらないことには会社は立ち行かなくなります。
会社によっては、売上げよりも仕入れの確保が優先されるかもしれません。
仕入れさえできれば、売ることは何とかなるという会社もあるでしょう。
そういった営業的な面とは別に、事務手続き面で、会社を設立したらやることについて書いてみます。
従業員を雇わない場合を前提として書きます。
各種届出書を提出する
事務手続きで最初にやっておきたいのでが、各種届出書の提出です。
下記の役所にそれぞれ下記に書いた届出書を提出します。
・所轄税務署 ・・・ 法人設立届、青色申告の承認申請書、源泉所得税の納期の特例に関する申請書など
・所轄県税事務所 ・・・ 法人設立届
・所轄市役所 ・・・ 法人設立届
これらの届出書は、会社設立日の属する月に提出することをおすすめします。
これらの届出書の中で、一番提出期限が短いものは市役所に提出する法人設立届で、設立の日から30日以内となっています。
地方自治体によって提出期限が異なる可能性がありますので注意してください。
例えば5月1日に会社を設立した場合に、5月31日に提出すると設立の日から31日後になりますが、法人設立届は1日提出が遅れたとしても影響はほとんどないので、設立の日の属する月内に、これらの届出書を提出すると覚えておけば、ほぼ問題はありません。
ただし、こういう言い方をしたのには別の理由があります。
それは、「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」が理由です。
会社は、給与や報酬を支払う際に所得税を源泉徴収しなくてはいけません。
この源泉徴収をした税額は、源泉徴収をした月の翌月10日までに納付します。
「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」 というのは、 原則では毎月納付する源泉所得税を半年に一度納付すればいいですよ、というものです。
1月から6月に源泉徴収した税額は7月10日までに、7月から12月に源泉徴収した税額は翌年1月20日までに納付すればいいのです。
ただし、注意点があって、 「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」は、申請書を提出した日の翌月から効力が発生するということです。
例えば、4月1日に会社を設立して、4月中に 「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」 を提出すると、5月から効力が発生します。
この場合、4月中に源泉徴収をした税額があるならば、原則通り、5月10日までに源泉所得税を納付しなくてはいけません。
5月、6月に源泉徴収した税額は7月10日までに納付します。
以降は、半年ごとの納付になります。
4月1日に会社を設立して、 「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を提出するのが、5月や6月になってしまうと、毎月源泉所得税を納付する回数が増えることになります。
毎月納付する手間を楽にしたいという理由で 「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」 を提出するのですから、なるべく早く効力を発生させた方が良いです。
効力を一番早く発生させるには、設立日の属する月内に提出すればいいということになります。
極端な例で言うと、6月30日に会社を設立した場合に、6月30日に 「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」 を提出すれば、翌日の7月1日から効力が発生します。
ちなみに、会社設立手続きを個人の司法書士に依頼している場合は、司法書士報酬から源泉所得税を差し引いて支払っていると思いますので、設立月に給与の支払いがなかったとしても、源泉所得税の納付が発生する可能性があります。
司法書士法人への支払いの場合は、源泉徴収する必要はありません。
役員報酬を決める
役員報酬って設立してすぐに決めなくてはいけないの?と思う人がいるかもしれません。
役員報酬を決めないとできないことがありますので、この時点で決めることをおすすめします。
役員報酬は一度決めたら、基本的には1期目が終わるまで変更できません。
ですから、慎重に決めたいものです。
1期目の業績予測は大変難しいですから、いくらにしていいかわからないということも多いでしょう。
そういった場合は、自分の予測通りに、あるいは多少高めの業績予測に基づいて、役員報酬を設定するといいです。
仮に、多少高めの役員報酬に設定をして会社が赤字になってしまった場合でも、その赤字は翌期以降に繰り越せます。
役員報酬を低めに設定して、予想以上の業績になったときは、法人税の負担を強く感じることになります。
1期目から多額の法人税を支払うのは気持ち的にしんどいという人も多いです。
そのようなことにならないためにも、予想通り、あるいは気持ち高めの役員報酬にする意味はあります。
先ほど、役員報酬を決めないとできないことがあると書きましたが、それは社会保険の加入です。
社会保険は役員報酬が0だと加入できません。
ですから、会社を設立してしばらくは役員報酬は払えない、3ヶ月目くらいからようやく役員報酬を計上できるといった場合は、社会保険に加入するのも、3か月後ということになります。
その間は国民年金と国民健康保険で問題ないということであれば、それでも大丈夫です。
もし、社会保険料を抑えたいという人は、1期目の役員報酬を低めに設定してもいいと思います。
先ほどは、1期目の法人税の負担を考慮して多少高めと言いましたが、社会保険料を考慮すると、低めという選択肢も考えられます
1期目の業績には不安があるという場合は、役員報酬を低く抑えた方が、社会保険料の負担も減るのでいいと思います。
それぞれの事情によっていいと思う選択をすればいいでしょう。
まとめ
会社を設立したら、営業面とは別に、事務的な手続きでやることがあります。
税理士への依頼を考えているのであれば、できれば、設立前に一度相談をすることをおすすめします。
そうすれば、今日の記事に書いたようなことは相談にのってくれるでしょう。
相談は有料で行うか、顧問契約を前提にするのがいいと思います。
特に、社会保険や役員報酬については、簡単に答えが出せないこともあるので、有料でもしっかりとした対応をとってくれる税理士に相談した方がいいです。
税理士への依頼を考えていない場合は、今回の記事に書いたようなことを自分で行います。
とりあえず、記事に書いたようなことはやっておきましょう。
これをやっておかないで1期目の決算間際に税理士に依頼をしても、税務上不利な扱いになることがあります。
最初にやっておくかどうかで扱いが変わりますので、会社を設立したら、やることがあるということは知っておきましょう。
会社を設立してから、登記が完了するまでに1~2週間くらいかかります。
登記が完了してから、これらの手続きをするでも問題ありません。
【編集後記】
4月1日に会社を設立したお客様が2件あります。
2件のお客様のうち、1件は半年ほど前に最初に相談に来られました。
もう1件のお客様も3ヶ月以上前に最初に相談に来られました。
設立が随分先だと税理士が嫌がるかなとかは気にせずに相談することをおすすめします。