昨日は、相続によって取得した土地や建物を譲渡したときのお話でした。
本日は、相続によって取得したアパートなどの事業用資産についての話です。
相続によって、個人事業を引き継いだ場合
もともと個人事業を行っていなかった人が、相続によって、死亡した人が営んでいた事業を引き継いだときは、新たに個人事業を開始することになります。
したがって、個人事業の開業届と青色承認申請書を提出する必要があります。
相続によって事業を引き継いだ場合の青色承認申請書の提出期限はやや複雑で、以下のようになっています。
1.被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の1月1日から8月31日)・・・死亡の日から4ヶ月以内
2.被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の9月1日から10月31日)・・・その年12月31日
3.被相続人が青色申告者の場合(死亡の日がその年の11月1日から12月31日)・・・翌年2月15日
4.被相続人が白色申告者の場合(その年の1月16日以降に業務を承継した場合)・・・業務を承継した日から2か月以内
死亡した人が、青色申告者であれば、基本的には4ヶ月以内と覚えておきましょう。
年の後半に死亡した場合には、少し注意が必要です。
10月以降の死亡の場合は、提出期限が短くなります。12月31日死亡のときが最短で、死亡してから2か月半しかありません。
死亡直後は、色々と大変で青色承認申請のことまで頭が回らないかもしれませんが、可能であれば、期限内に提出するようにしましょう。
死亡した人が白色申告者の場合は、2か月以内と覚えておけば問題ないでしょう。
こんなところにも、青色と白色の違いがあるんですね。
取得価額と取得時期、減価償却方法
相続によって、取得した減価償却資産の取得価額や未償却残高は、被相続人の取得価額や未償却残高を引き継ぎます。
しかし、相続による取得も、固定資産の取得になりますので、取得日は相続の開始日(死亡した日)になります。
取得が相続開始の日ですから、減価償却方法も引き継げません。
減価償却方法の届出をしていない場合は、定額法になります。
建物や付属設備、構築物は定率法を選択することは出来ませんが、車両や器具備品などは、届出によって定率法を選択することも出来ます。
平成28年3月以前の取得であれば、付属設備や構築物については、定率法を選択することも出来ます。
具体的なケースを見ていきましょう。
死亡した日 平成28年1月15日
死亡した人の取得日 平成16年1月1日
取得価額 5,000万円(木造アパート)
法定耐用年数 22年(旧定額法及び定額法の償却率0.046)
死亡した日における未償却残高 24,987,500円
取得価額と未償却残高は引き継ぎますから、それぞれ50,000,000円と24,987,500円です。
取得日は、相続開始の日ですから、平成28年1月15日です。
相続によって取得した資産は木造アパートで建物ですから、減価償却方法は定額法になります。
以上を踏まえて、減価償却費の計算式は以下の通りです。
50,000,000×0.046×12/12=2,300,000
平成28年末の未償却残高は、24,987,500-2,300,000=22,687,500円となります。
譲渡所得の場合の取得時期は、死亡した人の取得時期をそのまま引き継ぎますので、ややこしいですが、間違いのないようにしましょう。
まとめ
相続によってアパートなどの減価償却資産を引き継いだ場合のポイントは、以下の通りです。
・相続によって資産を取得した人が、もともと個人事業主でなければ、個人事業の開業届と青色承認申請書を提出する必要があります。
・青色承認申請書の提出期限は、死亡した人が青色か白色かで変わります。青色のときは、死亡した日によって提出期限が変わるので、注意しましょう。
・取得価額、未償却残高はそのまま引き継ぎます。
・取得日は、相続開始の日(死亡した日)です。譲渡所得の計算では、取得日も引き継ぎます。
・新たに取得したことになりますので、減価償却方法は引き継げません。
相続を受けた人の視点で書いてきましたが、死亡した人の準確定申告も必要になります。
税額が出るような人の場合は、こちらも忘れずに期限内に申告するようにしましょう。
【編集後記】
元巨人の加藤初さんが亡くなりました。
わたしが小学生の頃だったと思いますが、加藤さんといえば、マウンド上で表情を変えずに鉄仮面と言われていた記憶があります。
当時、わたしは、ピッチャーというのは、マウンド上で表情を出してはいけないのかと思いましたし、それがカッコいいと思っていました。
ポーカーフェイスという言葉もそのときに知ったような気がします。
ご冥福をお祈りします。