わたしは、いくつかの同業者のブログやインデックス投資ブログを定期的に読んでいます。
先日、その中の数か月に一度くらい読むブログの記事を見て思うことがありましたので、記事にします。
その人は、給与所得者でブログからの広告収入もあるという人です。(以下Aさんとします。)
Aさんのブログ記事で、青色申告特別控除65万で確定申告をしたという記事に引っかかりました。
数か月に一度しか読まないブログですが、事業所得になるようなことをしているのかな、と思ったのです。
改めて、ブログを見直してみると、はっきりとした数字は書いてありませんが、Aさんの平成28年の広告収入は年130万円程度と思われます。
ブログの記事数を数えてみると、2016年の記事数は70程度でした。
事業所得とは
国税庁のHPには、以下のように書いてあります。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、小売業、サービス業、その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得を言います。
しかし、こららの商売をしていると何でも事業所得になるかというと、そういうわけではありません。
(一財)大蔵財務協会が出版している図解所得税では、事業所得の考え方として、以下のようなポイントが挙げられています。
・対価を得て継続的に行う事業
・社会通念上事業と認められるもの
・自己の危険と計算において独立的に営まれる業務
・営利性、有償性を有する
・反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる
余計にわかりづらくなった気もしますが、これらは過去の判例にも出てくる言葉です。
しかも、何十年も前の判例だったりします。
一応、事業所得とはこんなものということがわかりました。
ブログの広告収入やアフィリエイトは事業所得に該当するか
答えは、一律には言えないということです。
事業所得になることもあれば、雑所得になることもあります。
個別の判断が必要になります。
その人が、ブログの広告収入やアフィリエイトを、上記の要件を満たして営んでいるかどうかがポイントです。
Aさんの場合で見ていきます。
1.対価を得て継続的に行う事業
広告収入を継続的に得ていますので、この条件は満たします。
2.社会通念上事業と認められるもの
ここは微妙ですね。
もちろん、事業としてこれで生計を立てている人もいます。
しかし、Aさんの場合は、給与所得者が副業で行っているもので、個人的には社会通念上事業とは言えないのかなと思います。
ブログを書くことは広告収入を得る目的で書いているとは思いますが、年70個の記事数で、一つ一つの記事の内容を見ても、事業でやっているというのは厳しいと思います。
3.自己の危険と計算において独立的に営まれる業務
わかりづらいのですが、自己の危険と計算において独立という要件は満たしていると思います。
4.営利性、有償性を有する
これは満たしているで問題ないでしょう。
5.反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる
「反復継続して遂行する意思」は満たしていると思いますが、社会的地位が客観的に認められるかどうかは難しいところです。
こうして見ていくと、今回取り上げているAさんの場合は、概ね事業所得の要件を満たしているようにも見えます。
しかし、わたしがAさんのブログを読んで判断する限りでは、社会通念上とか、社会的地位とかいう話になると、現時点では、事業所得とは言えないような気がします。
サラリーマンが副業することは珍しくはなくなっています。
今後も、この流れは変わらないでしょう。
時代の変化は早いので、ブログやアフィリエイトに対する社会通念も数年で変わる可能性があるかもしれません。
もちろん、Aさんのブログにかける時間が増え、収入も増えて給与所得と同等、あるいはそれ以上に稼ぐようになれば、現在の社会通念で見ても事業として扱って問題ないでしょう。
まとめ
事業所得か雑所得かの判断は、微妙な部分があります。
なぜ、この所得区分が問題になるかというと、事業所得と雑所得では、税務上の取扱がかなり違うからです。
有利不利で言うと、事業所得で青色申告をした方がかなり有利になります。
Aさんの場合は、年130万円程度の収入に対して、青色申告特別控除を65万円も受けられるわけですから、かなり大きな控除となります。
年100万円にも満たない副業を事業所得として認めると、事業所得に対する税金がほとんど発生しないという状況になるのです。
税務署としては、事業として認めたくない、納税者としては、事業所得として認めて欲しい部分になります。
いずれにしても、事業所得か雑所得かは個別の要素が強い判断になりますので、慎重な判断をするようにしましょう。
【編集後記】
先日、同業者の間でもこの事業所得か雑所得かという話が出ました。
税理士でも判断に迷う部分になるので、もう少しはっきりとした基準を作って欲しいなと思います。
不動産所得のように、事業的規模かどうかなどで、控除額や損益通算の範囲を変える方法もあるかと思いますが、現実的ではないかなぁ。