一人社長や個人事業主であるならば、「現金の管理は重要」とか、「現金出納帳をつけなくてはいけない」とか、「現金の残高を合わせなくてはいけない」とかいうことを聞いたことがある人は多いでしょう。
では、なぜ、現金について色々と言われるのでしょうか。
現金の管理ができないと何が問題になるのかを記事にしてみます。
経費に漏れが生じる可能性がある
現金の残高を管理していない場合、現金の支払い自体を忘れてしまうことがあります。
領収書がでない支払いだったり、領収書を紛失してしまったりする場合に、取引自体がないことになってしまう可能性があります。
電車代を140円支払ったことを忘れてしまえば、140円分費用が少なくなり、現金の残高が140円合わなくなってしまいます。
飲食店でもらった5,000円の領収書を紛失してしまった場合で、会計データの作成のときにそのことを忘れてしまっても、同じことが起きます。
預金の引き出し、または預け入れ
事業用の通帳から、お金を引き出したときや預け入れをしたときも、要注意です。
あとで、「この引き出しは何だっけなぁ」と思うことも珍しくありません。
何かの支払いに充てたかもしれないし、プライベートのお金だっ方もしれないということもあるでしょう。
現金を管理していないと、預金の引き出しや預け入れでも、残高が合わなくなってしまう原因になるのです。
しかも、預金の引き出しや預け入れは、まとまった金額になることもあるので、あとで内容を思い出せないと影響も大きくなってしまいます。
税理士事務所に記帳を依頼しているような場合で、普段の支払いは預金を通している場合などは、特に注意が必要です。
たまたま現金を引き出して経費の支払いをしたのに、領収書を紛失してしまったとしたら、税理士事務所側は、預金の引き出しが経費の支払いとは気づきづらいです。
社長がプライベート用にお金を引き出したのかなと推測されてしまいます。
そして、税理士事務所から、「これはプライベートの引き出しですか?」と聞かれると、社長側も「そうだったかなぁ」となってしまいます。
たったこれだけのことで、経費が漏れてしまうのです。
一番いいのは、一人社長は会社からもらう役員報酬でプライベートをまかなうことです。
プライベート用のお金は、会社の通帳からは引き出さないことにすれば、問題は起きづらくなります。
そうはいっても、一人社長の場合、どうしても一時的にプライベート用のお金が足りなくなったり、仕事用のお金が足りなくなることはあります。
そういった時は、必ず記録をとっておくようにしましょう。
プライベート用の引き出しや、預け入れの場合は、通帳に鉛筆で直接書いてしまってもいいでしょう。
会計データの入力間違い
預金の場合は、通帳に残高が記帳されていますので、会計データを間違えて入力してしまったとしても、残高を確認すれば、すぐに間違いに気づきますし、訂正もしやすいです。
さらにクラウド会計を使っている場合は、預金データを自動で取り込んでくれるので、残高は基本的に合うことになっています。
しかし、現金の場合は、残高を管理していない状態で数字を間違えて入力してしまっても、残高を合わせるものがないので、間違いにも気づきづらいです。
領収書の金額と、会計データの入力を一つずつ合っているかを確認しなくてはいけません。
1,000円の領収書を、10,000円と入力してしまえば、それで9,000円のずれが生じてしまうのです。
レシートの場合は、お預かり金額や、税抜き金額を入力してしまうこともあり、預金の入力に比べて間違いが発生する可能性が高いです。
間違いが発生する可能性が高いのに、確認する方法も手間がかかるのです。
まとめ
現金の管理ができていないと、なぜ問題になるのかということについて書いてみました。
まずは、経費が漏れてしまったり、経費の金額を間違えてしまうことがあります。
特に、大きな金額の領収書を紛失してしまったときは、金額も大きくなりますので、影響は大きいです。
そして、現金の残高がずれてしまうという問題も発生します。
さらに、プライベート用の引き出しや預け入れがある場合は、社長に対する貸付金や借入金が発生することになりますが、この金額の管理もしっかりとはできていないということになります。
社長に対する貸付金や借入金も、現金と同様の価値がありますので、これらの金額の管理ができていないとしたら、問題です。
現金管理をせずに、会社のお金は自分のものだと思って、プライベート用に自由に使ってしまうと、会社のお金が足りなくなってしまいますし、プライベートでいくら使っているのかもわからなくなってしまいます。
できれば、会社の通帳からのプライベート用のお金の引き出しや預け入れは避けた方がいいでしょう。
やむを得ずに、プライベート用のお金の引き出しや預け入れをしたときは、必ず記録をするべきです。
現金管理ができていないと、会計データの正確性にも欠けることになりますし、間違いに気づきにくいという問題もあります。
現金の管理をしっかりとすることに加えて、現金取引を減らす工夫をしてもいいでしょう。
現金の正確な管理が難しいという場合は、以下のことを守ることで、最低限の正確性を担保しましょう。
・現金で支払った場合は、なるべく領収書をもらい、なくさないこと。領収書をもらえない場合は、記録をすること。
・プライベート用のお金の引き出しや預け入れはなるべく少なくし、引き出しや預け入れをした場合は、通帳に鉛筆で書くなどして記録をすること。
これだけのことでも、やっておけば、問題をかなり減らすことができます。
【編集後記】
今日から、税理士試験です。
今頃は、簿記論の最中ですね。
わたしが簿記論を受験したのは、もう20年も前のことになります。
当時は、数年で試験に合格して、その数年後には独立なんて思っていましたが、実際に独立したのは20年近く経ってからになりました。
それでも、独立して良かったなぁ、と思います。