小規模企業の社長や個人事業主の場合は、自宅兼事務所という人も多いでしょう。
自宅兼事務所が持ち家の場合の注意点について書いてみます。
税務上居住用の自宅は優遇されることが多い
居住用の自宅については、税務上優遇されていることが多くあります。
しかし、自宅兼事務所の場合、事務所部分については、居住用の自宅としては取り扱われないことも多いので注意が必要です。
1.住宅ローン控除
住宅ローン控除は居住用部分について適用されます。
自宅兼事務所の事務所部分の割合が30%であれば、その30%部分については住宅ローン控除の適用はありません。
自宅兼事務所全部についての住宅ローン控除が20万円で、居住用部分が70%だとしたら、住宅ローン控除の額は14万円になります。
自宅兼事務所で住宅ローン控除の適用を受けている人は注意しましょう。
住宅ローン控除の場合は、居住用部分が概ね90%以上ある場合は、全てが居住用として取り扱っていいことになっていることも知っておきましょう。
2.自宅を売却した場合の3,000万円控除
居住用の自宅を売却して利益が出た場合は、利益が3,000万円までは税金がかかりません。
これも居住用部分のみに適用があります。
先ほどの例のように居住用部分70%の場合で、全体の売却益が2,500万円だったとしたら、控除される額は2,500万円×70%=1,750万円となり、750万円部分に対しては税金がかかります。
ちなみに、自宅兼事務所を売却した場合の取得費の計算は、少々面倒です。
居住用部分と事業用部分では、取得費の計算が変わってきますので、この点にも注意が必要です。
3.消費税
居住用の自宅を売却しても消費税はかかりません。
しかし、自宅兼事務所の場合は、事務所部分について消費税がかかります。
元々消費税の課税事業者であれば、建物の事業用部分について消費税がかかります。
売却価格3,000万円(土地2,000万円、建物1,000万円、事業用部分30%)とすると、1,000万円×30%×8/108=222,222円の消費税がかかります。
元々消費税の免税事業者で、年間の課税売上が800万円の個人事業主の場合を考えます。
この状態で、先ほどと同じ売却価格で自宅兼事務所を売却すると、消費税の課税売上が1,000万円を超えることになり、2年後は消費税の課税事業者になってしまいます。
まとめ
小規模企業の社長や個人事業主が自宅兼事務所にすると、経費が増えてお得のようなイメージがありますが、持ち家の場合は注意が必要です。
住宅ローン控除を受けている場合は、居住用部分のみ適用があります。
住宅ローン控除の額が減っても、減価償却費や固定資産税の事業部分の経費を計上すると、住宅ローン以上の節税効果がありますので、一概に不利とは言えません。
むしろ、事業部分をしっかりと経費にした方が税額は減ることも多いです。
自宅を売却するときは、事業用部分があると色々と面倒です。
利益が出たときの3,000万円控除も事務所部分については受けることができませんし、消費税にも影響を与えるとしたら、大変です。
売却を考えていない自宅であれば、そこまで気にする必要はないのですが、何らかの理由で自宅兼事務所を売却する場合は、色々と面倒だということは覚えておきましょう。
もし、数年後に自宅を売却することがわかっているのであれば、最初から自宅兼事務所にはしないという選択肢もあるかもしれません。
【編集後記】
昨日今日と、確定申告の無料相談会に参加しました。
色々な方の確定申告書を見て思ったのは、事業所得や不動産所得を自分で計算している人は結構間違っているなぁということです。
どうしたら、普通の人が正しい申告をできるようになるのでしょうか。
それなりに税額が出る人であれば、専門家に依頼すれば解決することも多いのですが、税額がほとんど出ない人の場合は、専門家に依頼するのも価格に合わない気がします。
税額に大きく影響がないことを考慮すると、仕方がないのでしょうか。
アイキャッチ画像は、少し前に行った佐倉市の「魚介醤油らーめん和屋」さんのえびワンタン麺です。
とても美味しかったです。和屋さんのメニューの中では一番美味しいかもと思いました。