一人社長が税制上の優遇制度を使わずに退職金相当のお金を準備する場合

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昨日の記事では、一人社長が税制上優遇されている退職金を利用することについて書きました。

一人社長が、税制上優遇されている退職金を利用することについて考える

2018.07.30

今日は、昨日と同じようなケースで、退職金相当のお金を自分で準備することについて書きます。

ケースのおさらいです。

前提条件

・一人社長であること
・自分が引退したときは、会社も解散又は休眠すること(後継者がいなく、事業も売却しないこと)

45歳で独立をして、65歳で引退するとします。

役員報酬を月額80万円、会社負担の社会保険料は月額10.2万円、会社の利益は0をベースとします。

昨日は、このベースから役員報酬を15万円下げて退職金を支給するケースと、役員報酬を下げた分、生命保険に加入するケースについて書きました。

今日は、役員報酬65万円をベースと考えて、そこから役員報酬を15万円上げることとし、増えた手取り分で退職金の準備をすることとします。

退職金の準備方法は、普段からわたしがこのブログでおすすめしている低コストのインデックスファンドを積み立てる方法とします。

なお、ここでは、個人型確定拠出年金やつみたてNISAなどの税制上優遇されている制度は利用しないものとします。

役員報酬を月額65万円から月額80万円に上げたときに増える手取り額は、約115,500円です。

この115,500円で毎月インデックスファンドを積み立てていきます。

インデックスファンドは世界中の株式に投資するものでも、債券やリートが含まれているものでもいいと思います。

インデックスファンドのリターンは年率3%の場合と4%の場合とを計算します。

毎月115,500円インデックスファンドを20年間積み立てて、年率3%と4%で運用できた場合、それぞれ以下のような結果になります。

積立元本 115,500×12月×20年=27,720,000円
年率3%で運用できた場合の金額 38,013,678円
この時点でインデックスファンドを売却して、売却益にかかる税率を20%とすると、税引き後の金額は35,954,942円

年率4%で運用できた場合の金額 42,311,743円
税引き後の金額は、39,393,394円

役員報酬を上げて増えた分の手取り額を全て積み立てると、元本部分だけで27,720,000円になります。

そして、年率3%と4%で運用できた場合の手取り額が上記の通りです。

昨日の記事と比較してみます。

役員報酬を80万円から65万円に減額し、減額した分を会社に留保して最後に退職金として支給した場合の退職金の手取り額

28,260,000-所得税1,806,900-住民税1,013,000=25,440,100円

役員報酬を80万円から65万円に減額し、生命保険を利用して退職金の準備をした場合の退職金の手取り額

27,480,000-所得税1,678,200-住民税974,000=24,827,800円

役員報酬を80万円にして、65万円の場合より増える分の手取り額を積み立てて自分で運用した場合の手取り額

年率3%で運用できた場合 35,954,942円
年率4%で運用できた場合 39,393,394円

こうして比較をすると、退職金を利用した場合よりも、自分で運用した方が手取り金額が随分と大きくなりました。

退職金で優遇されている税額よりも、複利で運用をする効果の方が大きいと言えます。

年率3%とか4%と聞くと、大したことのないように思うかもしれませんが、複利の力はとても大きいです。

ちなみに、65歳で積立はやめるとして、そのまま売却せずに運用を続けた場合の手取り額は以下のようになります。

70歳まで運用を続けたのちに売却した場合の手取り額  年率3%の場合 40,869,861円 年率4%の場合 46,791,691円
75歳まで運用を続けたのちに売却した場合の手取り額  年率3%の場合 46,579,113円 年率4%の場合 55,806,996円
80歳まで運用を続けたのちに売却した場合の手取り額  年率3%の場合 53,211,076円 年率4%の場合 66,792,733円

運用の効果と複利の効果が合わさって結構な金額になります。

80歳まで取り崩さずに運用を続けるのは難しいかもしれませんが、少しでも運用を長く続けた方がお金が増える可能性があります。

運用にはまだ抵抗がある人も多いと思いますが、運用をするとしないとでは長期的に見るとかなりの差がつくことも事実です。

もちろん、運用は上手くいかないこともあります。

きれいに年率3%や4%で毎年順調にお金が増えていく訳ではありません。

分散されたインデックスファンドと言えども、年に30%以上も基準価額が下落することもあります。

もし、資産総額が1,000万円のときに、30%下落すれば、300万円の含み損が発生します。

運用について全く勉強しない人にはおすすめできるものではありません。

しかし、先ほども言ったように運用しないことも、利益を逸しているかもしれないということで、損をしているとも言えます。

運用するしないにかかわらず、まずは資産形成について勉強するだけでもいいと思います。

昨日の記事でも書きましたが、ベストな選択はなかなかできるものではありません。

ですから、ベターとなるような選択を心がけることになります。

昨日と今日で見た方法をいくつか組み合わせるというのもアリかもしれません。

一生に稼げる金額には限りがあります。

限りある稼ぎの中で、上手くお金を残せるように考えていくことが大切です。

【編集後記】

わたしは神社によく行くのですが、神社には樹齢何百年という木が多くあります。アイキャッチ画像の木も樹齢800年と書いてあります。

もし、800年もの間複利で運用したら物凄い金額のお金になりそうです。

人間の場合、長期投資と言っても、せいぜい30年程度です。

それでも、30年も運用を続ければそれなりの金額にはなりますから、運用について考えることは大切だと思っています。


 

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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ 千葉県生まれ、千葉県育ち。 四街道市在住。 小規模企業の節税に強い、渡邉ともお税理士事務所 代表税理士。 節税をしながら、長期の資産形成をサポート。