法人成りの際に社会保険料のことを考慮することについては、このブログでも何度か書いています。
今回は、年金に絞って書くことにします。
実際には、年金というよりも老後のためのお金についてです。
具体的に言うと、厚生年金、国民年金、小規模企業共済や個人型確定拠出年金、国民年金基金、つみたてNISAについてのお話です。
個人事業主と小規模企業の経営者とでは全く違う年金
個人事業主と小規模企業の経営者とでは、年金が全く異なります。
個人事業主は国民年金で、小規模企業の経営者は厚生年金です。
国民年金は40年保険料を支払っても支給額は年70万円程度にしかなりません。
一方、厚生年金は支払っていた保険料にもよりますが、40年間厚生年金に加入していたとして、150万円から200万円ほどになることが多いでしょう。
厚生年金でも、それだけでは生活できるかどうか微妙な金額ですが、国民年金だけでは生活は難しいです。
負担ではなく、支給の面から見ると、小規模企業の経営者の方が恵まれています。
ただし、負担の面を考えると、一概にそうとも言えません。
厚生年金は一般の会社員の場合は、会社が半分保険料を負担してくれますので、自分が負担した保険料よりも、将来もらえる額の方が大きくなるのが通常です。
早くに亡くなってしまうこともあるので、絶対にそうとは言えませんが。
小規模企業の経営者の場合、特に1人社長の場合は、会社負担分も実質的には自己負担と変わりません。
全額自己負担のようなものです。
ですから、将来の支給額は多いけれど、負担も大きくなります。
しかし、年金は任意加入ではありませんから、負担が大きいからと言って加入しない訳にはいきません。
個人事業主を続けるか小規模企業の経営者になるかを選ぶことで、どの年金に加入するのかを決めることができるのです。
小規模企業共済
個人事業主や小規模企業の経営者のための退職金制度である小規模企業共済は、個人事業主でも小規模企業の経営者でも、その効果は変わりません。
掛金の上限額も同じです。
個人事業主でも、小規模企業の経営者でも、将来の自分の退職金のために積極的に利用したい制度です。
小規模企業共済は、節税の効果も高いので、その点からもおすすめになります。
小規模企業共済は、法人成りした際に契約を引き継ぐことができますので、引き継げる場合は、そのまま引き継ぐのがいいでしょう。
場合によっては、引き継げないこともありますので、引き継ぎの要件は確認しておきましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金も、老後のためのお金を準備するためのものですが、自分で運用するという特徴があります。
節税効果は、小規模企業共済とほとんど変わりません。
ただし、個人事業主と小規模企業の経営者では掛金の上限額が異なります。
これは、個人事業主は国民年金で支給額が厚生年金よりも少ないためです。
個人事業主の掛金の上限額は月額6万8千円ですが、小規模企業の経営者の場合は、月額2万3千円です。
わたしは、個人型確定拠出年金に加入する前から、インデックスファンドを積み立てていましたので、節税しながら、しかも運用益が非課税になる個人型確定拠出年金は、とても魅力的な制度だと思っています。
ただし、自分で運用するということは、運用の結果次第では損をすることもあるということです。
損をしたくない、運用なんかしたくないという人にはおすすめできるものではありません。
しかし、銀行に預けていてもお金は増えない時代です。
自分で運用するという選択肢はあっていいと思います。
個人型確定拠出年金の場合、法人成りしても個人型のまま確定拠出年金を続けることができます。
ただし、掛金の上限は月額2万3千円に大幅に下がります。
法人成りではなく、企業型確定拠出年金を導入している会社に入社した場合は、いったん資産を売却しなくてはならず、運用の空白期間が生じることになります。
運用の空白期間は大きな影響を与えることがあります。
国民年金基金
個人事業主の場合は、国民年金基金に加入することができます。
掛金の上限は、個人型確定拠出年金と国民年金基金とを合わせて月額6万8千円です。
掛金を支払ったときの節税効果は個人型確定拠出年金と国民年金基金とで同じです。
国民年金基金の特徴は、終身年金を選べるということです。
生きている限りもらうことができます。
国民年金や厚生年金は生きている限りもらえる年金ですが、小規模企業共済や個人型確定拠出年金はそうではありません。
個人事業主の場合は、個人型確定拠出年金と国民年金基金とを比較して自分に合った方に加入することになります。
どちらか一方だけに加入しなくてはいけないということではなく、例えば、個人型確定拠出年金の掛金を月額3万円、国民年金基金の掛金を月額3万円というようなこともできます。
自分で運用するのは不安だけれども、生きている限りもらえる年金は少しでも多い方がいいという人にとって、国民年金基金は有力な選択肢になります。
国民年金基金は、厚生年金の加入者は利用することができません。
つみたてNISA
つみたてNISAは長期・積立・分散した投資を支援するための制度です。
小規模企業共済や個人型確定拠出年金、国民年金基金と違って、掛金を支払ったときに税金が安くなることはありません。
投資信託の分配金や譲渡益が非課税になる制度です。
ですから、節税という点では、小規模企業共済や個人型確定拠出年金に劣りますが、その分、いつでも売却できるという利点があります。
小規模企業共済や個人型確定拠出年金は、廃業したり、60歳になったりしないと使えないお金になってしまいますが、つみたてNISAはいつでも使えるお金です。
いったん投資信託を売却したら、非課税の枠はなくなってしまうので、長期で運用する方が望ましいと思います。
そうは言っても人生何が起こるかわかりません。
もしものときには使えるお金が多い方がいいというのであれば、つみたてNISAも検討する価値は十分あります。
過去のデータでは、20年間に渡って世界中の株式に投資するインデックスファンドを積み立てればプラスになっています。
ただし、過去がそうだったからと言って、将来もそうなるとは限らないことには注意が必要です。
資産運用の勉強をしてみて興味を持ったなら、始めてみてもいいでしょう。
ちなみに、わたしは今年の1月からつみたてNISAを開始しています。
今年の分のつみたてはすでに終わっており、本日時点では6%ほどのマイナスとなっています。
しかし、あと19年保有するつもりでいますから、6%のマイナスはほとんど気になっていません。
まとめ
個人事業か法人かを考えるうえで、社会保険料の検討は欠かせません。
そこからもう一歩踏み込んで、年金のことも考えてみましょう。
よく個人事業主は、年金が少ないと言います。
確かに、個人事業主は年金が少ないです。
しかし、小規模企業共済、個人型確定拠出年金、国民年金基金と税制上優遇されている制度が多くあります。
これらを有効に使えば、個人事業主でも老後の備えができます。
老後まで資金が固定されるのが嫌ということであれば、つみたてNISAを利用する手もあります。
年金は自分次第で何とかなるようにはなっています。
小規模企業の経営者は、厚生年金にはなりますが、会社負担分も自己負担のようなものという点には注意が必要です。
年金について書いてある本などは、会社員を前提に書いていることがほとんどで、小規模企業の経営者目線で厚生年金について書かれていることはほとんどありません。
会社が保険料を半分負担してくれるのと、会社負担分も結局自分で稼がなくてはいけないのでは大きく違います。
さらに、小規模企業の経営者になると、国民年金基金には加入できませんし、個人型確定拠出年金の掛金の上限も減少してしまいます。
さらに、さらに定年がない小規模企業の経営者では、70歳まで厚生年金の保険料を支払わなくてはいけません。
もちろん、会社負担分も合わせてです。
こう考えると、年金という観点からは、個人事業主と小規模企業の経営者では、どちらが有利かというのは、一概には言えないと思います。
厚生年金は、将来の支給額以外の部分で国民年金よりも優遇されている部分がありますので、その点も考慮した方がいいでしょう。
いずれにしても、個人事業か法人かを考える際は、自身の年金についても検討した方がいいでしょう。
【編集後記】
千葉ロッテの外国人投手の獲得の知らせが入ってこないなぁ。
まさか、外国人投手の獲得なしということはないよね。
抑えかセットアッパーで外国人投手欲しいなぁ。
今日も懲りずにアイキャッチ画像をラーメンにしてみました。
八千代市にある「中華そば 金ちゃん」のワンタンメンです。
金ちゃんは、どのメニューを頼んでも外れがないですね。