シニア起業で法人成りを検討する際は、引退のときのことまで考える

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法人成りを検討する際にはシミュレーションを行うのが通常です。

シミュレーションによって税金の有利不利を判定することは法人成りの検討材料になります。

税金の有利不利はあくまでも検討材料の一つに過ぎません。

シニア起業の場合は、あと何年やるかまで考えていることが多いので、1年2年でのシミュレーションではなく、引退するまでのシミュレーションをした方がいいです。

今回の前提条件としては、以下の通りとします。

・現在は個人事業主で売上が1000万円以上ある(現在消費税を納めている)
・引退するまでの年数をある程度決めている
・現在の年齢は60歳以上とし、引退までの年数は10年以内である
・会社は自分の代で終わりとして清算する
・配偶者が仕事を手伝っている
・自分と配偶者以外の従業員はいない
・事業を拡大する予定はない
・個人事業開始時点から小規模企業共済に上限の掛金で加入している

単年でのシミュレーション

まずは、単年でのシミュレーションを行います。

ポイントは、配偶者の働き方と給与の額、社会保険でしょうか。

年齢は60歳以上ですので、すでに国民年金の支払いはありません。

法人成りをすると、厚生年金と健康保険に加入することになります。

忘れてはいけないのが、社会保険料の会社負担分も自己負担と同じようなものだということです。

一般的な会社員であれば、社会保険料は会社が半分負担してくれるという感覚です。

しかし、会社が負担してくれると言っても、今回のようなケースは、「ほぼ会社=自分」ですから、会社負担分も自己負担分と同じようなものなのです。

つまり、社会保険料の負担感が倍になるという感覚です。

率で言うと、約30%になります。

役員報酬の30%もの額の社会保険料を支払わなくてはいけません。

役員報酬が年500万円だとすると、社会保険料は年150万円です。

かなり大きな負担になります。

配偶者は仕事を週30時間未満で手伝うくらいで、月の給与が10万円くらいであれば、社長の扶養に入ることも考えられます。

そうした場合は、社会保険料は1人分で済むことになります。

配偶者もフルに働くということであれば、配偶者自身も社会保険に加入することになりますので、社会保険料の負担はますます大きくなります。

社会保険料の負担を減らしたいという理由で、配偶者の働き方を考えるかどうかは一つのポイントと言っていいでしょう。

通常は、法人成りをすると、社会保険料の負担(会社負担分も含む)が大きくなります。

対して、将来の給付が増えたり、傷病手当金や出産手当金をもらうことができるというようなメリットもあります。

小規模事業の経営者の社会保険の加入はデメリットばかりではないことも伝えておきます。

他には、法人税、所得税、住民税、事業税を合わせた負担額を比較します。

前提条件で、現在消費税を納めていると書きましたので、法人成りした場合は、2期の間、消費税が免税になる点もポイントとなります。

それから、利益を会社に残していくのか、役員報酬として取って、会社に利益を残さない方針にするのかで、シミュレーションも変わってきます。

会社に利益を残して、それが最後まで残ってしまうと税金が発生しますので、その点も注意が必要です。

引退時のシミュレーション

例えば、法人成りした後、6期営業をするのであれば、6期目のシミュレーションをします。

ここで考えるのは退職金です。

6期しかやらないので、あまり高額な退職金は出せませんが、それでも1000万円以上の退職金になることもあるでしょう。

前提条件で、小規模企業共済に上限の掛金で加入としましたので、ここでのポイントは、小規模企業共済の一時金が退職所得控除額を上回るという点です。

ということは、退職金からは、退職所得控除額を控除できないということです。

そもそも6年では退職所得控除額は240万円にしかなりませんが、それもつかえないと思っておきましょう。

実際は、退職金から退職所得控除額を控除して、小規模企業共済の一時金からは控除できないということになると思いますが。

もう一つの大きなポイントは、役員として勤務した期間が5年超かどうかということです。

5年以下だと、退職所得の金額が2分の1にならないので、退職金をもらおうと思っているのであれば、5年超はやった方が税金上は有利になります。

それから、退職金には社会保険料がかからないという点もポイントです。

先ほどから、社会保険料の負担が大きいと書いていますから、この点も考慮しましょう。

退職金を支給すると、最後の期が大赤字になることがあります。

これを回避するには、経営セーフティ共済や生命保険を利用することが考えられます。

経営セーフティ共済は1期目は加入できませんから、2期目から加入をすることになります。

上限の月額20万円をかけると、40ヵ月で上限の800万円に到達しますので、期間としては短すぎるということはありません。

2期目から5期目の法人税等を減らす効果があり、6期目については赤字を減らす効果があります。

経営セーフティ共済で足りなければ、生命保険も検討してみましょう。

まとめ

シニア起業で、引退までの期間がある程度決まっていて、その間の利益もある程度予測できるのであれば、引退までの期間でシミュレーションを行いましょう。

最後に退職金をもらう場合は、1期目から引退の前までの期と、引退の期では数字が大きく変わります。

そこまでを考慮したトータルでの数字で、法人成りをした方がいいかを検討するといいです。

40代以下の人であれば、有利不利よりも大切なことが多くあると思いますし、引退までの利益予測はとても出来ないでしょう。

シニア起業の場合は、若い人に比べて予測が立てやすいですから、法人成りの検討をする際は、引退時点までの数字を予測することをおすすめします。

【編集後記】

今年も残り1月半となりました。

年始に立てた売上目標に届かない見込みですが、残り1ヵ月半で、少しは挽回できるでしょうか。


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ABOUTこの記事をかいた人

1972年生まれ 千葉県生まれ、千葉県育ち。 四街道市在住。 小規模企業の節税に強い、渡邉ともお税理士事務所 代表税理士。 節税をしながら、長期の資産形成をサポート。