個人事業主は会社から退職金をもらうことができません。退職金は自分で用意しなければいけないのです。今回は、開業してすぐに小規模企業共済に加入するメリットについて書いてみます。
小規模企業共済は、個人事業主の退職金目的の制度
小規模企業共済の過去に記事については、こちらをご覧になってください。
「小規模企業共済→個人型確定拠出年金→NISAの順で資産形成をしよう!」
小規模企業共済は個人事業主の退職金を目的とした制度ですが、節税効果が高いので、このブログでも何度かおすすめしています。
今回は個人事業主について書いています。
わたしのブログでは、「個人事業主」と「ひとり社長」という言葉がよく出てきます。この2つの言葉は似ているので、同じように思う人もいるかもしれませんが、まったく違うものです。
ひとり社長というのはひとりで会社を設立して、その会社の社長のことをいいます。個人の税金の話をすると、会社からもらう役員報酬(給与)について所得税が課税されます。
これに対して、個人事業主は会社ではありません。個人で事業を行います。税金は、事業所得に対して課税されます。
ひとり社長は会社から退職金をもらうことができるのですが、個人事業主はそれができないので、小規模企業共済や個人型確定拠出年金という節税効果の高い制度を利用して退職金を準備することになります。
退職金が税金上優遇されている一番の理由は、退職所得控除
小規模企業共済は、掛金を支払ったときも節税になり、退職金としてもらうときも税金上優遇されます。退職金としてもらうときに優遇される理由は、退職所得控除額を控除できるからです。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて計算されます。勤続年数20年以下の部分は勤続年数×40万円、勤続年数が20年を超える部分は、超える部分の勤続年数×70万円で計算します。
小規模企業共済の場合の勤続年数は、掛金納付期間です。退職所得控除額を多くしようと思ったら、早めに小規模企業共済に加入する必要があるのです。
掛金を支払う余裕がなかったら、月額1,000円でもいい
個人事業を開始してしばらくは資金繰りの都合などもあり、多くの掛金を支払うことができないという人も多いでしょう。
しかし、退職所得控除額は掛金の額の多い少ないは関係なく、掛金納付期間によって計算されます。掛金の最低額は月額1,000円です。月額1,000円なら支払えるという人も多いでしょう。月額1,000円の掛金を支払うだけで退職所得控除額が増えるのです。
40歳で独立をして65歳で引退する場合で、1.当初5年間はお金に余裕がなくて6年目から加入した場合(加入期間20年)と、2.1年目から加入した場合(加入期間25年)の退職所得控除額を比較してみましょう。
1.掛金納付期間 20年 退職所得控除額 20年×40万円=800万円
2.掛金納付期間 25年 退職所得控除額 20年×40万円+(25年-20年)×70万円=1,150万円
2の場合、掛金納付期間が20年を超えますから、退職所得控除額は5年で350万円も違ってきます。退職所得の場合は1/2されて税率をかけます。所得税住民税の税率が20%とした場合、350万円×1/2×20%で35万円の所得税住民税が違ってくる可能性があるのです。
6年目以降の掛金を増額せずに、退職金としてもらう金額が退職所得控除額以下になる場合は、そもそも退職金に税金がかかりませんので、必ず有利になるというわけではありません。