会社員の場合、iDeco(個人型確定拠出年金)について、会社からの退職金で退職所得控除額を全部使ってしまうので、iDeCoをもらうときには税金がかかるからと敬遠している人もいるかもしれません。
しかし、退職所得控除額が使えないとしても、iDeCoはお得な制度です。
今回の記事では、復興特別所得税については考慮しないものとします。
iDeCoの節税効果
iDeCoの節税効果は3段階あります。
1つ目は掛金を拠出したときに、掛金が全額所得控除になり、掛金×税率分の所得税と住民税が安くなります。
2つ目は、運用益が非課税ということです。
通常は、投資信託の運用益には20%の税金がかかりますが、これが非課税になります。
3つ目は、もらうときに一時金としてもらえば、退職所得扱いとなり、退職所得控除額が控除されます。
退職所得控除額を控除したあとに残額が残ったとしても、その金額は2分の1になります。
また、他の所得と合算しないため、他に所得がたくさんあって総合課税の税率が高い人でも、退職所得の分のみで税率が適用されます。
具体的な節税額
では、具体的な節税額を見ていきます。
前提条件は下記の通りとします。
・40歳男性
・会社員
・40歳から60歳までiDeCoに加入、掛金は月額23,000円(年額276,000円)
・40歳から60歳までの所得税と住民税を合わせた税率は20%とする
・60歳で会社を退職し、退職金をもらう(勤続年数は40年で退職金は2,500万円とする)。
・iDeCoは61歳のときに一時金としてもらう
・iDeCoは年率3%で運用できるものとする
まず、1段階目の節税額は、次の通りです。
276,000円×20%×20年=1,104,000円
2段階目の運用益についてですが、20年間で元本が552万円になるのに対して、年率3%で運用できたとすると、資産は約786万円になり、運用益は約261万円になります。
税率は20%ですから、522,000円の節税になります。
3段階目の節税効果は、一時金としてもらうときです。
60歳の時に退職金2,500万円をもらっていますので、退職所得控除額は全額使い切っています。
この状態で61歳のときにiDeCoを一時金でもらうと、退職所得控除額は0になります。
では、iDeCoの一時金にかかる税額を計算してみます。
7,860,000円×1/2=3,930,000円
所得税 3,930,000×20%-427,500=358,500円
住民税 3,930,000×10%=393,000円
所得税と住民税の合計 751,500円
751,500円の納税となりました。
これらの節税効果の総額は、1,104,000+522,000-751,500=874,500円
となります。
iDeCoで退職所得控除額をフルに使えれば、節税効果の合計は1,626,000円になるのに対し、半分強の874,500円の節税効果にとどまりました。
これをどう思うかは人それぞれなのですが、最後に税金を支払ったとしても、トータルでは節税になっているのだから、お得と言えることに間違いはないと思います。
ちなみに、上記の例で、所得税と住民税を合わせた税率が30%の人の場合の節税額は、約142万円になります。
現役時代の所得が高い人ほど第1段階の節税額が大きくなり、有利になります。
iDeCoを受け取るときには国民健康保険への加入になっていますが、退職所得は国民健康保険料の計算に影響を与えないと思いますので、国民健康保険料については影響はありません。
まとめ
会社員で退職金がある場合は、iDeCoをもらうときに税金がかかるから、iDeCoに加入しても意味がないと言われることがありますが、そんなことはありません。
最後に税金がかかることを知らないでいると、とても損をした気分になるかもしれませんが、知っていれば、トータルでは節税効果があったことがわかるはずです。
また、今は退職金をもらうつもりでいても、今後は退職金は減るかもしれませんし、途中で会社を辞めてしまうかもしれません。
もし、50歳のときに会社を辞めて、iDeCoは65歳まで継続すれば、会社からの退職金をもらうときとiDeCoで一時金をもらうときの両方で、退職所得控除額を満額使うことができます。
こういう可能性もあるので、iDeCoをやることは損にはならないのかなと思います。
もちろん、iDeCoに加入する際には注意点もありますので、加入するときは十分に検討するようにしてください。
大きな注意点としては、資金が拘束されることや、運用がマイナスになる可能性があるということでしょう。
【編集後記】
今日から11月とは思えないような暖かい1日でした。
寒暖差が激しくなると思うので体調には気をつけないといけないですね。
インフルエンザの予防接種もそろそろ受けないと。