個人型確定拠出年金は受け取る時期を選ぶことができる
今回はひとり社長が、自分の会社からは退職金をもらい、個人型確定拠出年金では一時金で受給する前提で話をすすめます。
個人型確定拠出年金の最大のメリットは掛金が全額所得控除になるという節税効果でしょう。
これに加えて受け取るときも、一時金でもらえば退職所得控除額が控除できます。ここまでの節税メリットは知っている人も多いでしょう。
では、受け取る時期(順番)にスポットをあててみます。
個人型確定拠出年金は60歳から70歳までの間の任意の時期に請求することができます。退職金と同時に請求した方がいいのか、それともどちらかを先にもらったほうがいいのか。
今回の結論は、個人型確定拠出年金を一時金で受給した後に、5年以上たってから会社から退職金をもらうことをおすすめします。
退職所得の金額の計算
30歳で会社を設立すると同時に個人型確定拠出年金に加入して、65歳で会社を辞めて会社から退職金をもらい同時に個人型確定拠出年金を一時金でもらった場合の退職所得の計算をみていきます。
会社からの退職金は3,000万円、個人型確定拠出年金の一時金は2,000万円とします。この場合の退職所得の金額の計算は
1.30,000,000-{700,000×(35年-20年)+8,000,000}=11,500,000
2.20,000,000-{700,000×(35年ー20年)+8,000,000}=1,500,000
3.1+2=13,000,000
と、なればいいのですが、こうはならないのです。その年の前年以前4年内に退職金をもらっているときは、勤続年数の計算でその分を考慮しなければいけないのです。
具体的な計算は複雑になりますので、ここでは触れないことにします。同じ年または4年内に複数の退職金をもらうときは、勤続年数の計算が変わるということを覚えておきましょう。
もらう順番と時期を工夫する
上記のことから、会社からの退職金と、個人型確定拠出年金の一時金をもらうタイミングを5年以上あけたほうがいいということが分かりました。これだけであれば、5年以上間をあけてそれぞれをもらえばいいだけのお話しです。しかし、それだけでは上手くいきません。
個人型確定拠出年金の一時金の場合は、4年以内ではなく14年以内に退職金をもらっていた場合は勤続年数の計算が変わることになっています。このことから、先に会社の退職金をもらってしまうと、上手く退職所得控除を使うことができません。
ひとり社長であれば、自分の退職時期が調整できること、個人型確定拠出年金については受給の時期を選べることから、60~65歳で個人型確定拠出年金の一時金をもらい、5年経ってから会社を引退して退職金をもらうと、退職所得控除額を有効に使うことができるのです。
サラリーマンだと退職金をもらう時期を選ぶことが難しいと思いますが、退職時期を選べるというひとり社長のメリットを有効に使いましょう。
通常のサラリーマンではなかなかこの手は使えないこと、個人型確定拠出年金がまだまだマイナーなことから、一時金をもらうときの勤続年数の話まで聞くことはあまりありません。40代以下であれば、あまり気にしなくていいかもしれませんが、50代になったら、出口戦略もしっかり考えておきましょう。
先に個人型確定拠出年金の一時金を請求することになるので、個人型確定拠出年金の運用益が非課税になるメリットを最大限に受けることはできなくなります。自分にとっていつどうやって受給するのが有利なのかを慎重に判断するようにしましょう。