退職金は長年の勤務に対する報償であり、老後の生活資金としての性格を有するため、課税上すごく優遇されているのです。
退職所得の金額
退職所得の金額は以下の計算式で求められます。
(収入金額ー退職所得控除額)×1/2
収入金額は額面金額です。退職所得控除額は勤続年数が20年以下であれば勤続年数×40万円、勤続年数が20年を超える場合は、20年以下の部分の勤続年数×40万円+20年を超える部分の勤続年数×70万円となります。
例えば、勤続年数が15年の場合は15年×40万円=600万円となり、勤続年数が38年の場合は20年×40万円+(38年-20年)×70万円=2,060万円となります。
23歳から60歳までの38年間働いた場合は2,000万円以上の控除額になりますので、退職金を2,000万円もらったとしても、所得税住民税は1円もかからないのです。これだけでもすごく優遇されているということがわかりますね。
退職所得控除額を控除してから、更に1/2するのですからいたれりつくせりです。
平成25年以降は、役員等が勤続年数5年以下である場合は、1/2をしないことになりました。長年の報償、老後の生活資金といった退職金の趣旨を考えると当然のことかもしれません。
退職所得の税額
退職所得の税額の計算は、下記の速算表によって、他の所得と分離して計算します。
課税退職所得金額(A) | 所得税率(B) | 控除額(C) |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | ー |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
どこかで見たことある表だと思いませんか?そうです、「給与収入の場合の所得税の計算」 の記事でみたものと同じ税率なんです。違うのは他の所得と分離して計算するということです。通常、給与所得や事業所得、不動産所得など複数の所得がある場合はそれぞれの所得を合算して計算するのですが、退職金の場合はほかの所得と合算をしないのです。
ですから、ほかに給与所得や不動産所得がいくらあろうとも退職金の課税所得が100万円しかなかったら、税率は5%で済むのです。税率の面でも退職金は優遇されているのです。
実際は所得税のほかに住民税が10%かかりますので、所得税と住民税を合わせて考える場合は上記の速算表の税率に10%を加算して考えれば大丈夫です。
一人社長なら引退するときは退職金をもらおう
税金上すごく優遇されている退職金ですから、一人社長であってももらわないと損といえます。資金を用意する必要がありますが、資金さえ用意できるのであれば、もらわないという選択肢はないでしょう。
資金の準備方法としては、内部留保、生命保険などが考えられます。生命保険で準備する場合は別の注意点がありますので、加入する前によく検討する必要があります。
内部留保については、会社が利益を出して税金を払って残った金額を貯めるわけですから、退職金に対しては税金はかからないかもしれませんが、それまでの法人税はそれなりに支払う必要があります。
いずれにしても、資金がなければ退職金を支給できませんから、何らかの方法で資金を準備しなければいけません。
ちなみに、個人事業主の場合は自分に退職金を出すことはできませんので、法人の場合に限ることは覚えておいてください。
関連記事はこちら
「ひとり社長なら退職金の準備をしよう!」