わたしは5カ所の税理士事務所勤務をへて独立をしました。
従業員5人の税理士事務所から150人の税理士事務所まで経験していますので、色々な税理士事務所を中から見ることができました。
そういった経験にもとづいて、税理士事務所で働きたいと思っている方へ事務所選びのポイントを書いてみます。
前提として、個人事業主や小規模企業が主な顧問先の税理士事務所で働きたいという人向けです。
ですから、いわゆるビッグ4で働いてみたいとか、大きな会社相手に働きたいとか、資産税メインの事務所で働きたいという人にはあまり参考にならないと思います。
所長税理士は大きなポイント
個人の税理士事務所はもちろん、それなりの規模の税理士法人でも、所長税理士(代表税理士)は大きなポイントになります。
記事中では税理士事務所と書きますが、税理士法人も含むこととします。
数十人程度の税理士事務所でも、所長税理士の影響はとても大きいです。
所長税理士と合わないとモチベーション等色々な面で問題が発生しますので、所長税理士がどんな人かは確実にチェックをした方がいいです。
ホームページを見たり、所長税理士がブログをやっていれば、ブログも読んでみましょう。
その際に、ホームページやブログがどの程度営業目的で書かれているかまで注意して見るようにしましょう。
営業目的でいいことしか書いていない場合は、かなり割り引いて読むようにします。
中には、書いてあることと実際にやっていることが、全く違う税理士事務所もあるかもしれません。
所長税理士の年齢もポイントです。
30代以下の人で、一カ所で長く働こうと思っているのであれば、50代以下くらいの所長税理士の方がいいでしょう。
税理士が所長税理士1人の事務所も多いですから、所長が引退するときに事務所がなくなってしまったり、全く文化の違う大手の税理士事務所に買収されたりすることもあり得ます。
また、60代以上の所長税理士であれば、徐々に事務所を縮小していこうと考えているかもしれません。
年齢は自分より5歳くらい上から、20歳くらい上までがいいのではないでしょうか。
頻繁に従業員を募集しているかどうかもポイント
従業員の募集をどのくらいの頻度で行っているかもポイントです。
数年にわたって、あるいは複数回就職活動をしていれば、ある程度わかるのですが、就職活動をしていないとわかりづらいかもしれません。
頻繁に募集をしていて、事務所の規模が大きくなっていない場合は、人の入れ代わりが激しいと想像できます。
事務所がどんどん大きくなっている場合は、頻繁に募集をしているのは当然です。
人の入れ代わりが激しいというのは、何らかの好ましくない理由があると思いますので、避けた方がいいと思います。
所長の人柄や、給与などの条件面、従業員同士の関係がよくないなどの問題が考えられます。
ちょっと付け加えると、どんどん大きくなっている事務所は、従業員の数が増えていると同時に辞めている人も多い印象があります。
20人入社して10人辞めるけど、10人増えているといった感じです。
これをどう思うかは、人によって違うでしょう。
人の入れ代わりが少ない事務所では、そもそも募集をすることが少ないので、あまり募集を見かけることはないかもしれません。
基本的には、どんどん大きくなっている事務所は、事務所側もある程度は辞めることを想定して採用していると思います。
わたし自身、40人程度のときに入社をして150人くらいになった事務所で働いた経験があります。
これはこれで、色々な経験ができるので、いい面もあります。
ただし、そういった事務所でみんながいい経験ができる訳ではありません。
なかには、あまりいい経験をできずに辞めてしまう人もいます。
どういった事務所で働いても同じようなことが言えますので、いい事務所に入ったからと言って、それはただのスタートだということは覚えておいた方がいいでしょう。
その組織の中で認められなければ、いい経験を積むことは難しいと思います。
面接でのポイント
わたしの経験では、税理士事務所は入ってみなければわからないという側面が強いです。
ですから、応募の段階でわかることは少ししかありません。
その中で、面接は、入社前にその事務所のことを知るいい機会です。
面接をされる側ではありますが、こちらとしてもアンテナを全開にして、その事務所がどんな事務所なのかを探った方がいいです。
あからさまにそういった態度で質問をすることはおすすめしませんが。
さきほど所長税理士がポイントと書きましたが、面接は、所長税理士がどんな人かを知るいい機会です。
この人のもとで働いてみたいと思えるかどうか、しっかりと確認するようにしましょう。
事務所の雰囲気みたいなものもわかることがあるかもしれません。
わたしは、面接の際に建物に入った瞬間、「ここじゃない」と思ったことがあります。
家から近い事務所であれば、応募前に、実際にその税理士事務所を見ておいた方がいいでしょう。
事務所を見ただけでわかることがあるかもしれません。
面接は騙し合いの要素もあると思っているので、先方の言うことを100%信じるよりは、7割程度に思っておいた方がいいです。
騙し合いの要素もあると書きましたが、わたしは面接のときに嘘は言わないようにしていました。
入社してすぐにわかることですから、嘘をついて入社をしてもいいことはないと思っています。
例えば、給料について、「最初は安いけれど、やればやっただけあげるよ」と言われたとします。
あまり経験がない人だと、「そうか、やればやっただけもらえるんだな」と思ってしまう人もいるかもしれません。
しかし、やればやっただけもらえていると感じている人は多くないと思います。
それよりも、最初は安いといった点に注目した方がいいかもしれません。
最初が安いと、そこから普通以上に高くなることはかなり難しいと思います。
わたしは、数十人いる事務所の全体ミーティングで、所長税理士が、「今月から給料を3万円あげた人がいる」と言ったことを今でも覚えています。
所長は、頑張れば給料が一気に3万円も上がることがあるんだよと言いたかったのかもしれませんが、わたしは、たった3万円上がるだけでこれほどまでの言われ方をするのかと思ってしまいました。
ここでは、月の給料が3万円あがることはよっぽど珍しいことなんだなとがっかりしたことを今でも覚えています。
最初は給料が低くてもいいという考えは危険です。
ただし、未経験の場合はある程度は仕方ないかもしれません。
その場合は、数年間安いのを我慢して、転職して給与を上げていくという方法をとった方がいいかもしれません。
面接で言われたことについて、入社後に話が違うということもよく聞く話です。
ですから、面接で言われたことはあくまでも7割程度で考えるようにしましょう。
所長税理士が嘘を言っているという訳ではなく、受け取り方によって3割くらいの差が生じるということです。
ネットの情報は取捨選択が必要
税理士事務所みたいな小さな組織でも、今では、インターネットで色々な情報を得ることができます。
しかし、インターネットの情報は、いい加減なものも多くありますので、取捨選択が必要です。
基本的には辞めた人が情報を発信していることが多いと思っています。
辞めた人は、何らかの不満があって辞めることが多いので、悪いことを中心に書くのは当然です。
一方、不満がない人は辞めませんので、ネットに事務所のことを書くことはほとんどありません。
結果として、ネットには悪い情報が多く書かれることになります。
また、開業税理士などがネットで以下のようなことを言っていることがあるかもしれませんが、これらの言葉も全て額面通りに受け取る必要はないと思っています。
・入社したら3年は続けなくてはいけない
・最初のうちは給料が安くても仕方がない
・うちで働けば、勉強にはなると思う
・給料のことばかり言っているようではだめだ
・この世界は一人前になるのに10年かかる
どれも正論のようにも聞こえますが、参考程度に聞いておけばいいのではないでしょうか。
まとめ
税理士事務所で働いたことがない人向けに、税理士所選びのポイントを書いてみました。
もし、就職をする時期がわかっていて、それまでに時間があるのであれば、早めに就職活動をした方がいいです。
実際に応募しなくても、事務所探しは早めにやっておいた方がいいでしょう。
時間をかけて探せば、いつも募集している事務所かどうかもわかるようになります。
今回は、税理士事務所に長く働くことも考えた事務所選びについて書いています。
数年で転職、あるいは独立を考えている場合は、また違ったポイントが重要になってくることもありますし、試験勉強を重視するのであれば、勉強できる環境であるかどうかが最重要ポイントになってきます。
いずれにしても、転職を繰り返すことはマイナスになることも多いため、慎重に税理士事務所を選ぶようにしましょう。
今は、わたしが就職活動をしていた頃と比べると、ネットの情報が豊富にあります。
しかし、ネットの情報に振り回されすぎるのもよくありません。
最終的には入社してみなければわからないというのが真実だと思います。
それでも、外す確率を少しでも下げることができるように、事前に調べられることは調べるようにしましょう。
【編集後記】
10連休が終わりました。
娘が小さいので、ほとんど外出はしませんでした。
もうしばらく外出は少なめになりそうです。