税務調査におけるお土産は、もはや都市伝説のような存在になっているのかもしれません。
わたしは、税務調査にお土産などないと思っていますので、以前にブログで、税務調査のポイントNo.1から5までを書いた時も、お土産については、一切触れませんでした。
しかし、今週号の週刊ダイヤモンドの記事を読んで、否定しておいたほうがいいなと思ったので、書いてみます。
あらかじめ誤りを残しておくなんてことはない
今週号の週刊ダイヤモンドの特集は、「労基署が狙う」でした。
その中の、「労基署対応マニュアル2017年版」に次のような記載がありました。以下、引用します。
税務調査の際、調査官が何も問題点を見つけられなければ税務署に帰りづらいだろうと、あらかじめ帳簿上に軽微な誤り(=お土産)を残しておく場合もあるとされるが、
この後には、労基署の調査にお土産は必要ないと続きます。
この記事では、労基署の調査には、お土産が必要ないということを言うために、わざわざ、「税務調査の際には、お土産を用意することもあるが」ということを書いているのです。
実際にあることを書くのならいいのですが、実際にないことを、さもあるかのように書くのは良くないですよね。
今回の特集は、あくまでも労基署についてですから、税務調査の話はおまけ程度に書いてあるのですが、それにしても、この言われ方は税理士としては納得がいかないですね。
これは、誰かに取材してこういう話を聞いたのでしょうか。
おそらくそんなこともせずに、記事を書いた人の思い込みや、話の振りとして書いた文章だと思います。
確かに、未だに、お客様から初めて調査を受ける際に「お土産」という言葉を聞くことがあります。
そういうときは、決まってこう答えます。
「お土産なんて必要ありませんよ。」と。
大抵の税理士は、同じように答えるでしょう。すべての税理士を知っているわけではないので、絶対とは言えませんが。
今回、気になって、家にあった国税OBなどが書いた税務調査についての本を見返してみました。
その中で、2007年に出版された、大村大次郎さんという人の書籍「社長!税務調査はこうして乗り切れ」に下記のような記載がありました。以下、引用します。
「おみやげ」というのは、税務調査で何も誤りがなかったら、調査官は仕事をしていないような気になって税務署に戻りにくいので、納税者があえて軽微な誤りをしておく、というものです。
週刊ダイヤモンドと、全く同じような内容です。もちろん、このあとに、お土産は必要ないと書いてあります。
大村さんという人は、著者紹介で、1961年生まれ、国税局で10年勤務と書いてありますから、その時代の話と考えると、やはり20年から30年も前の話です。
わたしが少し振り返っただけで、このような文章が見つかるのですから、週刊ダイヤモンドの記事を書いた人も、ネットか書籍でこのような文章を見つけて今回、記事に書いたのでしょう。
もう一度いいますが、あらかじめ間違えておくなんて、わたしは聞いたことがありません。
もう、お土産の話をするのは止めにしませんか
20年前か30年前には、このようなことが本当にあったのかもしれませんが、現在では、もうない話です。
いい加減に、もう終わりにしませんかと言いたいです。
いつの話をしているのですか?と。
インターネットが普及している現在では、このような言葉がネット上にいつまでも残ります。
それを見た人は、税務調査にはお土産があるんだと思ってしまいます。
自動車の自動運転や、電子マネー、仮想通貨などが現実になってきている時代に、30年前にあった話を亡霊のようにし続けても仕方がありません。
まとめ
税務調査のお土産なんて、まともに考えたことがなかったのですが、正直、わざと間違えておくという言葉には驚きました。
わたしの感覚では、税務調査におけるお土産とは、税務調査があったからには、少しの修正は仕方ないかなということくらいの感じでした。
お土産って、あらかじめ間違えておくことなんですね。ホントにいつの時代の話なのでしょうか。
何十年も前の都市伝説のような、税務調査における「お土産」の話は、もう終わりにしましょう。
【編集後期】
「逃げ恥」をもじって、「借りるは恥だが役に立つ」とか、「赤字は恥だが役に立つ」というタイトルの記事を書こうかなと思ったのですが、タイトルで釣るような記事になってしますので、止めました(笑)